「パシフィック・リム:アップライジング」(2018)……戦いの舞台はTOKYOへ

原題「PACIFIC RIM UPRISING」

製作国:アメリカ

監督:スティーヴン・S・デナイト

製作:トーマス・タル、メアリー・ペアレント、ジョン・ジャシュニ、ギレルモ・デル・トロ他

脚本:エミリー・カーマイケル、キラ・スナイダー、スティーヴン・S・デナイト、T・S・ノーリン

撮影:ダン・ミンデル

プロダクションデザイン:シュテファン・デシャント

衣装デザイン:リズ・ウォルフ

編集:ディラン・ハイスミス、ジョシュ・シェファー、ザック・ステーンバーグ

音楽:ローン・バルフェ

出演:ジョン・ボイエガ、スコット・イーストウッド、ケイリー・スピーニー他


 怪獣との戦いから10年後。イェーガーの部品の違法な転売で生計を立てていたジェイクと、盗んだパーツで小型イェーガーを自作していた少女・アマーラ。二人は数奇な運命に導かれ、環太平洋防衛軍へと入隊することになる。同じ頃、シャオ産業はニュートン博士の協力のもと、無人イェーガーの開発を進めていた。環太平洋防衛軍は、無人イェーガーの採用に関する会議をシドニーで開催するが、そこに謎のイェーガーが現れ、会議を襲撃する――。


 「パシフィック・リム」5年ぶりの続編である。もともと早い段階から続編の企画が持ち上がっていたものの、レジェンダリーとユニバーサルとの対立、中国企業によるレジェンダリーの買収などで制作は遅れ、それによってギレルモ・デル・トロも「シェイプ・オブ・ウォーター」の制作を優先し、今作ではプロデューサーとしての立ち位置に。脚本に関しても、前作のトラヴィス・ビーチャムが外れ、監督のスティーヴン・S・デナイト含む4人での執筆体制となった。その影響か、前作とはかなり印象の違った作品になっている。


 最も大きな違いはイェーガーのデザインであろう。前作のイェーガーは鈍重で重厚なロボットだったが、今回は全体的にスリムでスタイリッシュなデザインとなり、機動力も大幅にアップ、軽快な動きを見せる。これはまあ、10年間の技術進歩の賜物、という設定だろうが、好みは分かれるところか。ちなみにストーリーも、前半から中盤にかけては謎のイェーガー、オブシディアン・フューリーとのバトルがメインとなり、怪獣が活躍するシーンは終盤に集約されている。怪獣の大盤振る舞いだった前作から比べればやはり物足りなさは否めない。イェーガー同士の戦いという新要素は新鮮だし、これもまあ巨大ロボットモノのお約束ではあるのだが。


 なんだか文句ばかりになってしまったが、決してダメな映画というわけではない。前作の特撮シーンがほとんど夜間だったのに対し、本作では逆にほとんど昼間。陽光のもとで戦うイェーガーには前作とはまた違う魅力を見いだせるだろう。また雪原での戦いや防衛軍基地の襲撃など、バトルフィールドもバリエーション豊か。そして最終決戦の場所はJAPANのTOKYO。高層ビル群のど真ん中で、怪獣3体とイェーガー軍団の激戦が繰り広げられる。前作での海中決戦も斬新ではあったが、やはりバトルのクライマックスを市街地で展開してくれるのは嬉しいところだ。それから個人的にプッシュしたいのが、中盤で登場する、怪獣とイェーガーの融合体。半生物、半ロボットのゲテモノ感が素晴らしい。いっぱい出てくるわりに登場シーンが短いのが残念だが――。


 ファン待望の続編だったが、前作のような熱狂的な高評価を得られることはなかった。特撮シーンは前作以上のクオリティだが、やはりあのロボットや怪獣に対するフェチ的な情熱や、泥臭いダサカッコよさみたいなものが本作にはいまいち欠けていたように思われる。ラストは続編がありそうな終わり方だったものの、2020年4月現在、続編に関する情報はない。できれば続けてほしいところだが。

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