「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ 」(2019)……かつてない壮大さで描かれる怪獣王決定戦!
原題「GODZILLA: KING OF THE MONSTERS」
製作国:アメリカ
監督:マイケル・ドハティ
製作:メアリー・ペアレント、アレックス・ガルシア、トーマス・タル、ジョン・ジャシュニ、ブライアン・ロジャーズ
製作総指揮:ザック・シールズ、バリー・ウォルドマン、ヒロ・マツオカ他
原案:マックス・ボレンスタイン、マイケル・ドハティ、ザック・シールズ
脚本:マイケル・ドハティ、ザック・シールズ
撮影:ローレンス・シャー
プロダクションデザイン:スコット・チャンブリス
衣装デザイン:ルイーズ・ミンゲンバック
編集:ロジャー・バートン、リチャード・ピアソン、ボブ・ダクセイ
キャスティング:サラ・ハリー・フィン
音楽:ベアー・マクレアリー
出演:カイル・チャンドラー、ヴェラ・ファーミガ、ミリー・ボビー・ブラウン他
ゴジラとムートーの戦いから5年。特務機関モナークのエマ・ラッセル博士は、怪獣の発する周波数を解析し、怪獣と交信する装置「オルカ」を完成させていた。エマ博士は、中国雲南省の基地で目覚めたモスラの幼虫を、オルカで制御してみせる。しかし、そこへ過激派環境団体の戦闘部隊が襲撃、オルカを強奪し、エマ博士と娘のマディソンを人質にとってしまう。環境団体のリーダー、アラン・ジョナは南極へと向かい、オルカを使ってモンスターゼロ――キングギドラを覚醒させる。それを察知したゴジラも南極に出現。戦いの火蓋が切って落とされる。
レジェンダリー・ピクチャーズが展開する「モンスターバース」シリーズの1本。「GODZILLA ゴジラ」から5年後を舞台とし、ゴジラ、モスラ、ラドン、キングギドラの戦いを描く。監督は前作のギャレス・エドワーズから「X-MEN」シリーズのシナリオ等を手掛けてきたマイケル・ドハティにバトンタッチ。アメリカ産ゴジラとしてはエメゴジ含めて3作目だが、アメリカ人が監督を務めるのは本作が初である。
レジェンダリーが東宝からモスラ、ラドン、キングギドラの使用権を取得したことは、早い段階から判明しており、ファンの間では話題となっていた。いずれの怪獣もミレニアムシリーズ以来、15年以上の間を空けての再登場であり、かつ初のハリウッドデビューということもあって、そのデザインにも大幅なアレンジが加えられると思われたが、おおむね元のイメージを踏襲した感じに仕上げられた。最も印象が変わったのはモスラだろう。幼虫、成虫ともに、よりリアルな蛾や蚕に寄せたデザインとなり、体の部分はスマートに、翅はしなやかなベールのようになり、全身をほのかに発光させていることで、妖精のように幻想的かつ神秘的な存在となった。成虫は脚部が発達し、また尻に毒針を持つなど、蛾以外にも色々な虫のモチーフが取り込まれている。見た目は変わり、インファント島の設定もなくなったが、少美人を思わせるような双子の登場、そして流れる「モスラの歌」、さらに劇中での活躍を見れば、モスラが継承してきた精神性はこの映画にも受け継がれていることは一目瞭然であろう。
キングギドラのデザインはほぼ本家通り、目立つ違いといえば翼が巨大化したくらいだが、今までのキングギドラとは根本的に異なる点がひとつある。それは着ぐるみではなくCGで描かれていることだ。ご存じの通り、キングギドラの着ぐるみを動かすのはいつの世もタイヘンであった。首は操演で縦横に動いても、胴体部や羽の動きはどこか固かった。しかし今回ついにキングギドラは着ぐるみという軛から解放され、かつてない躍動感を手に入れたのだ。体を仰け反らせ天へと咆哮するキングギドラ、翼を地面についてティガレックスみたいに走るキングギドラ、ラドンと空中戦を繰り広げるキングギドラ――そして「三大怪獣地球最大の決戦」での登場以来、大ボスというよりヤラレ役みたいなイメージも持たれたりしたが、今回のキングギドラは歴代最強クラスの強さで、その存在自体が地球の危機そのもの。動きも強さも、まさにキングギドラの真の姿を見せられた感がある。
そしてラドンは本家と同じく火山から復活。翼竜というよりは怪鳥のようなシルエットで、皮膚が火山の熱に耐えられるよう硬質化している他、翼から火の粉を撒き散らしながら飛行する。昭和版ではなく「VSメカゴジラ」のファイヤーラドンのようなイメージが強い。劇中では「空の大怪獣ラドン」で見せたような戦闘機部隊との空中戦を展開。こちらもまた着ぐるみや吊り人形ではなくCGなので、その動きも派手になり、体を回転させて戦闘機を撃墜させるという芸当も披露。そして映画終盤では、ゴジラシリーズで初となる「成虫モスラVSラドン」のバトルが繰り広げられた。
怪獣たちの復活により、世界中が混乱の渦に叩き込まれる。劇中で幾度も「神話」という単語が用いられるが、怪獣同士のバトルはまさに神話のような壮大さで展開され、そのバトルシーンも宗教画のごとき美しさと荘厳さをもって描かれる。またビジュアル面だけではなく、シナリオ中にもキリスト教的なモチーフを挿入することによって怪獣の神性をさらに高めているところが本作の凄まじいところだ。そしてキングギドラが宇宙怪獣ということが判明するに至り、物語は「地球VS宇宙」の様相も呈してくる。そのスケール感にはもはや圧倒されるしかない。
また熱心な怪獣映画のファンならば、平成VSシリーズなどのゴジラ映画やその他の怪獣映画に対するオマージュをいくつも見いだせるだろう。さまざまな怪獣映画の要素を取り込みつつ、新たなる怪獣神話を創造してみせた本作は、まさしく究極の怪獣映画であった。
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