「ゴジラVSメカゴジラ」(1993)……三つ巴のベビーゴジラ争奪戦

製作国:日本

監督:大河原孝夫

製作:田中友幸

プロデューサー:富山省吾

脚本:三村渉

撮影:関口芳則

特殊効果:渡辺忠昭

美術:酒井賢

造型:若狭新一

編集:米田美保

音楽:伊福部昭

特技・撮影:江口憲一

特技・助監督:鈴木健二

特技・操演:鈴木豊

特技・美術:大澤哲三

特技監督:川北紘一

助監督:三好邦夫

出演:高嶋政宏、佐野量子、原田大二郎


 ベーリング海アドノア島。翼竜の化石の調査に向かった大学の研究班は、ふたつの卵を発見する。ひとつは孵化した後だったが、もう片方は完全な状態で保存されていた。研究班は卵を持ち帰ろうとするが、その時、ラドンが出現。キャンプを襲撃する。さらに海からはゴジラが上陸し、ラドンと激しく争う。研究班は両者が戦っているすきに卵を持って島から脱出。日本へ持ち帰られた卵からは、ゴジラザウルスが生まれ、ベビーゴジラと名付けられる。やがてベビーに呼び寄せられるようにゴジラが上陸。一方、国連G対策センターでは新兵器メカゴジラが完成していた――。


 ゴジラシリーズ20作目にしてゴジラ生誕40周年記念作。監督には前作から引き続き大河原邦男、脚本は大森一樹から三村渉にバトンタッチ。三村は「ゴジラ2000」以降のミレニアムシリーズでも脚本を執筆している。登場怪獣はゴジラ、メカゴジラ、ラドン、そしてゴジラの息子ベビーゴジラ。昭和の人気怪獣を一度に三体もリファインして集結させた豪華な内容となっている。


 今回の対戦相手となるメカゴジラは、昭和版と異なり人類の味方である。メカキングギドラの残骸から得られた未来のロボット工学と、スーパーXシリーズの技術を応用し、ゴジラとの戦闘に耐えうる装甲と攻撃能力を誇る(わざわざゴジラに似せた理由は謎だが)。武装はビーム兵器であるメガ・バスターやレーザーキャノンの他、麻痺弾パラライズミサイル、ゴジラの体内に電流を送り込むショックアンカー、ゴジラの熱戦を増幅して撃ち返すプラズマ・グレネイド。圧倒的な火力をもってゴジラを攻め立てる。最終決戦では戦闘機ガルーダと合体してスーパーメカゴジラとなり、弱点であった機動力の低さもカバー。ビーム攻撃の他、ゴジラの第2の脳を内部から破壊して動きを止めるというえげつない攻撃も披露し、有利に戦いを進めている。まさにゴジラ抹殺にのみ特化した兵器であり、その戦闘力はメカキングギドラ以上。シリーズでも類を見ない、ゴジラの息の根を止める可能性があった怪獣である。


 ラドンは、新規映像としては「怪獣総進撃」以来の復活。着ぐるみではなく操演とギニョールのみによる演出になり、よりプテラノドンらしいシャープな体型となった。劇中では、自身の「兄弟」であるベビーゴジラを取り戻すため、ゴジラやメカゴジラと敵対する。後半ではファイヤーラドンにパワーアップし、熱戦攻撃を身に着け、平成シリーズらしいビーム合戦を彩った。


 さて、ベビーゴジラである。紹介が遅れたが、本作のキモはこの怪獣だ。今回の戦闘はすべてベビーゴジラの奪い合いで、そのために日本へ上陸したゴジラとラドンをメカゴジラが迎撃する、という構図である。しかしただ戦闘を起こすための舞台装置としてだけではなく、「ゴジラにとっての生とは何か?」を掘り下げるための重要な役割を担っており、かつ人と怪獣の距離を近づけ、怪獣への感情移入を促すことによって、怪獣同士のドラマにより深みを与えるキャラクターとなっている。ゴジラとベビーゴジラとの関係は、次作、次々作と積み重ねられることによって、平成シリーズの最後を美しく飾るのだ。だから「やっぱ殺せるうちに殺しといたほうが良かったんじゃないの」などというツッコミは野暮なのである。


 本作は日本映画としては初めてドルビーデジタル5.1chサラウンドフォーマットが使用された。公開当時は一部劇場でしか5.1ch仕様のフィルムで上映されなかったが、映像ソフトにはこの音声も収録されている。

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