「ゴジラVSモスラ」(1992)……モスラ成虫、26年ぶりの大復活
製作国:日本
監督:大河原孝夫
製作:田中友幸
プロデューサー:富山省吾
脚本:大森一樹
撮影:岸本正広
美術:酒井賢
編集:米田美保
音楽:伊福部昭
特技監督:川北紘一
助監督:三好邦夫
出演:別所哲也、小林聡美、村田雄浩他
平成シリーズ第3弾。もともとは「モスラVSバガン」というモスラが主役の作品が撮影される予定だったのが、ゴジラとの対決ものに方針転換された。もとの企画の名残か、ゴジラ映画でありながらほとんどモスラが主役のような扱いになっている。
モスラ成虫が久々に登場するが、これは1966年の「ゴジラ・エビラ・モスラ」以来、実に26年ぶり。また、卵、幼虫、繭、成虫という変態の全過程が描かれたのは、初代「モスラ」以来となり、ゴジラ映画としては本作が唯一である。さらにインファント島や小美人(本作ではコスモスと呼称される)といった設定も復活、ストーリーも「さらわれた小美人を取り戻すためにモスラが東京を襲撃する」という、初代を踏襲したものとなっており、あらゆる面でモスラの原点回帰が図られている。しかし単なる焼き直しではなく、当時特に注目されていた環境問題や家族の再生といったテーマを盛り込み、まったく新しい物語が生み出された。
さらなる新要素として、モスラと対を成す怪獣、バトラが新登場。バトラとはバトルモスラの略称であり、その名の通り非常に強力な攻撃性を有している。モスラと同じく蛾の怪獣だが、甲虫のような意匠も盛り込まれ、黒をベースに赤や黄色を交えたけばけばしいカラーリングが特徴。モスラとはまた印象の異なるカラフルさである。劇中では能登半島沖に姿を現したのち、名古屋を襲撃し、フィリピン沖でゴジラ、モスラと交戦する。まだ幼虫の段階でありながら、ゴジラに対して一歩も引けを取らない様子からも、その強さと攻撃性が伺える。
映画後半では、モスラは国会議事堂に繭を張り、成虫へと変態。国会議事堂が選ばれたのは、初代でのボツ案を拾ったものだという。羽化のシーンはスモークと逆光と金粉が三位一体となって、かつてなく幻想的な演出となっている。川北特撮を象徴するワンシーンである。成虫モスラは昭和と比べて丸みを帯びたデザインとなり、羽や胴体もモコモコした可愛らしい感じになっている。あまりにおもちゃっぽくて生物感を損ねている気がしないでもないが。
同じ頃に成虫化したバトラとモスラは空中戦を展開。操演怪獣同士がぶつかりあう光景はなかなか貴重である。最終的にはゴジラも乱入し、横浜の夜景の中で三大怪獣の最終決戦が始まる。今まではろくな攻撃手段を持っていなかったモスラだが、ここで初めて触覚からの超音波ビームを披露。ゴジラも今まで以上に放射熱線を撃ちまくり、バトラもビームで応戦する。こうしたビーム技メインのバトルは平成シリーズの特徴でもあり、一部からは批判の対象となることもあるが、肉弾戦もしっかりと描かれているし、何よりこのきらびやかで派手な演出が当時の子供たちに鮮烈なイメージを植え付けたことは言うまでもない。こと本作においては、「極彩色の大決戦」というキャッチコピーにふさわしい、鮮やかで美しいバトルシーンに仕上がっている。
本作は平成シリーズ最多となる観客動員420万人を達成。2016年の「シン・ゴジラ」に抜かれるまで、平成以降のゴジラ映画ではトップの記録であった。
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