「ゴジラVSキングギドラ」(1991)……永遠の宿敵、最初で最後の一騎打ち

製作国:日本

監督:大森一樹

製作:田中友幸

プロデューサー:富山省吾

脚本:大森一樹

撮影:関口芳則

特殊効果:渡辺忠昭

美術:酒井賢

デザイン:西川伸司

造型:小林知己

編集:池田美千子

音楽監督:伊福部昭

擬斗:宇仁貫三

特技・撮影:江口憲一、大根田俊光

特技・操演:松本光司

特技・美術:大澤哲三

特技・編集:東島佐枝

特技監督:川北紘一

出演:中川安奈、豊原功補、小高恵美他


 東宝創立60周年記念作と銘打たれ、多額の予算が投じられた大作。「ゴジラVSビオランテ」から引き続き、大森一樹が監督と脚本を、川北紘一が特撮を務めているが、作風は前回とがらりと異なり、タイムマシンやサイボーグといったSF要素を全面に押し出した、明るい娯楽作となっている。ゴジラの対戦相手となるのは、久々の復活となるキングギドラ、及びその強化形態となるメカキングギドラ。前作の興行収入が今一つだったため、新怪獣ではなく人気怪獣を再登場させることになったのである。なおキングギドラはシリーズに何度も登場しているが、ゴジラと一対一で戦うのは、意外にも本作のみである。


 新生キングギドラは未来人の手先という設定。突如として1992年の日本に現れた23世紀人は、未来の日本がゴジラによって壊滅させられていることを告げ、ゴジラを消滅させて歴史を改変し、日本を救おうとする。しかしこれは地球均等環境会議の過激派による陰謀であった。未来人たちはゴジラを消し去る代わりにキングギドラを誕生させ、1992年の日本を攻撃し始める。実は「未来の日本が壊滅している」というのは嘘で、実際にはゴジラは一度も再出現しておらず、日本は米ソ中以上の超大国へと成長していたのだ。その日本の増長を阻止すべく、キングギドラの攻撃で日本の国力を削いでしまおうという計画だったのである。現在からすれば現実味のない話だが、まだまだバブルの空気が残っていた時代の映画である。当時の日本のイケイケドンドンぶりが伺える。


 一方、歴史改変によって消えたはずのゴジラは、別の場所から出現。身長100メートル、体重6万トンの、いわゆる「4代目ゴジラ」の誕生である。世代によってはこのゴジラが最も馴染み深いだろう。「ラゴス島に生息していたゴジラザウルスという恐竜が放射能の影響で怪獣化した」という平成版ゴジラのルーツも、本作で明らかにされている。


 ゴジラとキングギドラの戦いでは、未来人に操作されるキングギドラがゴジラを圧倒。空中からの攻撃でゴジラを翻弄する他、翼で放射熱戦を防ぐ、首で締め付けるなどのパワフルさを見せている。最終的には真ん中の首を吹き飛ばされて敗北を喫するが、未来人の技術によって、メカキングギドラとして復活。戦いの舞台を新宿副都心に移し、巨大なミニチュアセットの中での両怪獣の最終決戦が描かれる。両者の身長さえも大きく上回る高層ビル群の中での決闘は大迫力。また前作とは異なり日中での戦闘は、作品を貫く明るいイメージを決定づけた。日中のシーンは特撮の粗が目立ちやすいという欠点はあるものの、あえてそこに挑戦した効果は充分以上にあったと言える。


 本作は前作を上回るヒットを記録し、次回作以降も人気怪獣復活路線が取られることとなった。また本作は第15回日本アカデミー大賞の特殊技術賞を受賞している。なお本作で描かれた歴史改変のせいで後のシリーズとの繋がりがよく解らないことになってしまっているが、あまり深く考えないのが吉である。

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