「ゴジラVSビオランテ」(1989)……ファン投票第一位の人気作
製作国:日本
監督:大森一樹
製作:田中友幸
プロデューサー:富山省吾
原案:小林晋一郎
脚本:大森一樹
撮影:加藤雄大
特殊効果:久米攻、渡辺忠昭
美術:育野重一
造型:安丸信行、品田冬樹
編集:池田美千子
音楽:すぎやまこういち
テーマ曲:伊福部昭
特技・撮影:江口憲一
特技・操演:松本光司
特技・美術:大沢哲三
特技監督:川北紘一
出演:三田村邦彦、田中好子、高嶋政伸他
ゴジラシリーズ第17作にして平成初のゴジラ映画、かつ95年まで続く平成ゴジラシリーズの本格的な幕開けを飾る一本である。これまで数多くの特撮作品に携わってきた川北紘一が、ゴジラ映画では初めて特技監督に就任。以降の平成シリーズでも全作で特技監督を務め、新たなゴジラ像を確立するに至る。音楽には伊福部昭の曲を使用する他、すぎやまこういちが新曲を描き下ろし。平成シリーズを通して活躍するエスパー少女・三枝未希も、本作ですでに登場している。同じ役者が同じ役を6作連続で演じるという例は、怪獣映画史上、他に類を見ない。
物語は84年版「ゴジラ」の、直接の続編。テーマにはバイオテクノロジーを取り上げ、無限の可能性を秘めたゴジラ細胞を巡ってドラマが展開される。シナリオは一般公募によって選ばれた、歯科医師の小林晋一郎の作品がベースになっている。小林は「帰ってきたウルトラマン」34話「許されざるいのち」のストーリー案を円谷プロに投稿して採用されたという経歴の持ち主で、同作に登場するレオゴンのデザイン原案も彼による。動物と植物の融合、バイオテクノロジーの功罪というテーマ、そして芦ノ湖が舞台となる点などが、「ゴジラVSビオランテ」にもそのまま踏襲されている。
本作に登場するゴジラは前作と同一個体だが、デザインにはかなりアレンジが加えられた。頭部を小さく、目は三白眼から猛禽類のような黒目がちの瞳になり、より生物感が増しており、このゴジラが平成時代の新しいスタンダードとなった。また歯が二列になっているのは、小林晋一郎のアイデアだという。武器はおなじみの放射火炎の他、放射火炎のエネルギーを全身から発する体内放射という新技も身につけている。
そして新怪獣ビオランテは、薔薇とゴジラと人間の細胞を融合させて生まれた怪獣で、ゴジラシリーズでは初めての、植物をベースとした怪獣である。それだけにデザインにもかなりの試行錯誤が重ねられた。さまざまなデザイン案が提出されたが、最終的には撮影開始ぎりぎりになってから西川伸司のデザインを元に特撮美術の大沢哲三が現在の形にまとめあげ、かつてないシルエットの怪獣が誕生した。ゴジラをも凌ぐ巨体に植物的な意匠、口のついた触手、当時の海外クリーチャーブームを反映させたグロテスクささえ感じさせるディテールなど、数多いる東宝怪獣の中でもかなり異色の存在である。ただ特撮パートの多くはゴジラと自衛隊との攻防で、ビオランテの出番はそれほど多くない。第二形態(植獣形態)が出てくるのは映画の終盤も終盤、見た目ほど強いわけでもなかったりするのだが、しかしその秀逸なデザインと、触手を振り乱しながら迫りくるド迫力の突進シーンは見る者に強烈なインパクトを残した。あと死亡時の演出も結構なインパクトで、今でも語り草である。
本作はファンの間で人気が高く、2014年に日本映画専門チャンネルが開催したゴジラ総選挙では初代ゴジラを抑えて見事第一位に輝いた。ゴジラの災害という面を前作からさらに掘り下げつつ、ゴジラと自衛隊の総力戦、大都市へのゴジラの侵攻、東宝特撮お約束の超兵器の活躍、そして巨大怪獣同士のバトルなど、ゴジラ映画に求められる要素が全部詰まった一本なので、この人気も納得である。ただ公開当時の興行収入はいまいちで、次作以降は昭和シリーズと同じくファミリー層を意識した作風へと方針転換することとなる。
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