「ブロブ 宇宙からの不明物体」(1988)……アメーバ系怪獣映画の決定版

原題「THE BLOB」

監督:チャック・ラッセル

製作:ジャック・H・ハリス、エリオット・カストナー

脚本:チャック・ラッセル、フランク・ダラボン

撮影:マーク・アーウィン

音楽:マイケル・ホーニッグ

出演:ケヴィン・ディロン、ショウニー・スミス、ドノヴァン・リーチ他


 アメーバ系怪獣映画の歴史は古い。その元祖はホラーの名門、ハマー・フィルムが1956年に公開した「怪獣ウラン」にまで遡れる。不定形の体を利用してどこにでも入り込む、人や物を溶かしてしまう、などといった基本はここですでに確立されている。他にもイタリア産「カルティキ/悪魔の人喰い生物」(1959)、アメーバよりコウモリグモのほうが有名な「巨大アメーバの惑星」(1959)などなど、50年代のモンスター映画・SF映画の隆盛に乗っかって多くの作品が生み出された。そんな中でもカルト的人気の高いのが「マックィーンの絶対の危機」(1958)で、それをリメイクしたのが本作「ブロブ 宇宙からの不明物体」である。


 プロデュースはオリジナルと同じくジャック・H・ハリス。監督は「エルム街の悪夢3 惨劇の館」(1987)「マスク」(1994)のチャック・ラッセル。そして脚本には新人時代のフランク・ダラボンが参加している。フランク・ダラボンといえば「ショーシャンクの空に」(1994)や「グリーンマイル」(1999)で知られるが、2007年のモンスター映画「ミスト」の監督・脚本も手がけた他、2014年版の「GODZILLA」の脚本にも携わっており、怪獣映画との関わりも深い。


 物語の舞台はアメリカの片田舎、アーバーヴィル。町外れの森に墜落した隕石から粘液状の生物が飛び出し、老人の腕に取り付いてしまう。錯乱して道路に飛び出した老人は、ポールとメグの車に轢かれ、病院へと運ばれるが、生物はいつの間にか老人の体を貪って成長していた――。


 ここからはグロシーンのオンパレード。老人は下半身を食われ上半身だけになり、主人公かと思われたポールもあっさり生物の犠牲に。生物に吸収され、内側から助けを求める姿が恐ろしい。他にも流し台の排水口に頭からメキメキと引きずり込まれていく店員、電話ボックスごと飲み込まれる女、内側から生物に吸収されて体が収縮していく金髪のお姉さんなどなど、テンポ良くバタバタ殺されていくうえに、その殺され方もアイデアに富んでおり、まさに「嫌な死に方博覧会」といっても過言ではない。特にポイントが高いのが、子供が殺されるシーンを描いているところ。普通なら忌避されがちだが、本作では子供も大人と同じように生物の中に取り込まれ、容赦ない捕食によって無残な最期を遂げる。


 生物は、最終的には一軒家ほどの大きさに巨大化。触手状の器官を自在に扱う他、自由自在な形態変化を行い、もはや単なるアメーバに留まらない。生物はCGではなくアナログの特撮で表現されているが、古臭さや安っぽさはまったく感じさせず、B級映画のリメイクながら今でも見応えのある作品である。ちなみにタイトルでは「宇宙からの不明物体」となっているが、実はアメリカ軍が作った生物兵器の一種。当時はまだ東西冷戦下で、「ソ連には作れないだろう」などというセリフが時代性を感じさせる。


 近年、再リメイクの話が持ち上がっていたが、どうやら立ち消えになってしまったらしい。現代の最新技術で描かれる「ブロブ」も、ぜひ見てみたいものである。

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