「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」(2009)……前人未到の100体怪獣モンスロード

製作国:日本

監督:坂本浩一

アクション監督:野口彰宏

プロデューサー:岡部淳也

制作プロデューサー:岡川晃基

脚本:岡部淳也、樫原辰郎、小林雄次

キャラクターデザイン:後藤正行、木谷太士朗

撮影:古谷巧

美術:大澤哲三

造型:品田冬樹、高橋勇也

編集:今井大介

音楽:マイケル・バータ

ビジュアルスーパーバイザー:岡部淳也

照明:齋藤勝範

VE:相川和彦

整音:阿波良和

VFXプロデューサー:桑原崇

VFXチーフディレクター:子安肇

造型プロデューサー:澗淵隆文

監督補:日暮大幹

出演:南翔太、黒部進、森次晃嗣他


 長きに渡りウルトラシリーズを制作してきた円谷プロだったが、杜撰な経営体制が祟り、倒産寸前にまで追い込まれていた。その危機を救ったのが映像制作会社のTYOである。TYO主導の組織改革によって円谷プロの同族経営に終止符が打たれ、またそれに並行してバンダイナムコグループも資本参加し、新たな体制が築かれていった。本作は、そんな新体制発足後の円谷プロの、初の映画作品でもある。


 本作は世界展開を視野に入れ、今までのウルトラシリーズよりもさらにハイクオリティな作品を目指して制作された。監督にはアメリカで「パワーレンジャー」シリーズを手掛けていた坂本浩一を招聘。M78星雲・光の国を中心とした、スペースオペラとでも呼ぶべき壮大な作品世界、ワイヤーアクションを駆使したスピーディなバトルシーン、ウルトラマンや怪獣は着ぐるみを使いつつも背景はフルCGで描くなど、従来の作品とは一線を画する作品となっている。


 本作はともかく物量が凄まじく、無数のウルトラ戦士やウルトラ怪獣が息つくまもなく現れる。冒頭からウルトラマンメビウスvsベムラーという、当時最新のウルトラマンと初代ウルトラマン第一話の敵怪獣による新旧対決が繰り広げられ、さらにゴモラvsザラガスというスーツ改造仲間どうしのバトルもあり。飛んだり跳ねたりしながらも重量感を忘れない演出が心憎い。さらにはミクラス、ウィンダム、アギラのカプセル怪獣三体揃い踏みなどのファンサービスもあり。「セブン」に登場した宇宙竜ナースはCGによって生まれ変わり、まさに水を得た魚のように生き生きと動き回る。極めつけは怪獣墓場に漂う怪獣たちの一斉復活だ。ギガバトルナイザーを掲げたウルトラマンベリアルが「100体怪獣モンスロード!」と叫ぶと、魂だけだった怪獣や宇宙人が肉体を得て大復活、その数なんと100体(ということになっているが実際にはは50体程度である)。大量の着ぐるみ怪獣が一堂に会するシーンはまさしく圧巻であり、ゴジラシリーズでも観たことがない規模である。ちゃんと調べたわけではないが、これが最も多くの怪獣が出た映画で間違いないだろう。

 大量の怪獣は結局ウルトラマンたちによってばったばったと倒されていき、ベリアルもウルトラマンゼロによって一度は倒されるが、無数の怪獣たちの魂を寄せ集め、百体怪獣ベリュドラとして復活する。全体的なシルエットは悪魔のようだが、よく見てみると全身に怪獣の体が浮き出ており、それぞれの怪獣が光線を放ったり捕まえたりするなど個別で攻撃してくる。ちなみに表面に浮き出ている怪獣の総数は200体以上いるらしく、もはや百体怪獣どころではない。なお設定上は身長4000メートルで、ウルトラマンの百倍近いが、これもCGではなく着ぐるみが造られ、アクターが4人がかりで動かしていたという。どこまでも規格外な怪獣である。


 本作はウルトラシリーズを総括するような作品であり、ファン向けのお祭り映画でもあるが、ここからウルトラシリーズに入門するのもアリだろう。本作で初登場したウルトラマンゼロとウルトラマンベリアルは、現在まで続くTVシリーズでも何度も登場する人気キャラクターとなっており、現在のウルトラシリーズの源流が本作にあると言ってもいい。怪獣映画は好きだけどウルトラシリーズは詳しくない、みたいな人にもおすすめである。


 2011年には中国でも公開された。かなり大規模での公開となり、興行成績も日本映画としては歴代最高を記録、アジア圏でのウルトラシリーズ人気の高さを証明した。

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