「地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン」(1972)……宇宙より飛来する悪のサイボーグ怪獣
製作国:日本
監督:福田純
製作:田中友幸
脚本:関沢新一
撮影:長谷川清
美術:本多好文
編集:田村嘉男
音楽:伊福部昭
特技・合成:土井三郎
特技・撮影:富岡素敬
特技・操演:中代文雄
特技・美術:青木利郎
特殊技術:中野昭慶
出演:石川博、高島稔、梅田智子他
子供に真の平和を教えるための遊園地、世界子供ランドの建設が進んでいた。しかしその実態は、地球侵略を目論むM宇宙ハンター星雲人の前線基地であった。星雲人は宇宙からガイガンとキングギドラを呼び寄せ、地球への攻撃を開始する。その頃、ゴジラとアンギラスは宇宙怪獣を迎え撃つため、怪獣島から日本へと向かっていた――。
第二次怪獣ブームもピークを迎えようかという時期に制作された一本で、今回も東宝チャンピオンまつり内で公開された。監督は「ゴジラ・エビラ・モスラ」「ゴジラの息子」の福田純、特撮は同年4月に設立された東宝映像株式会社が担当、中野昭慶らが中心となって制作にあたっており、久々に本編班と特撮班の二班体勢での制作となった。キングギドラの登場シーンには過去作からの流用が目立つものの、ガイガンの都市破壊や、防衛隊がアンギラスを迎撃するシーン、コンビナートでの四大怪獣の対決などは、低予算を感じさせない、見ごたえのある仕上がりになっている。
昭和シリーズ末期は「悪の侵略者と怪獣をゴジラが迎え撃つ」という作風が続くが、それを確立したのが本作である。「ゴジラは我々の切り札だ!」というセリフに象徴されるように、ゴジラは悪に対抗する存在として扱われ、「ゴジラマーチ」というテーマソングも作られた(作曲は特撮ファンにはおなじみの宮内國郎)。ガメラのような親しみやすいヒーローとしてのキャラ付けが意図的になされている。ただし、ガメラとは異なり、人間に対しては不干渉を貫いている。
また今回は怪獣島の設定が復活しており、ゴジラは他の怪獣と一緒に仲良く暮らしている。その中でも特に仲が良いのがアンギラスらしく、異変を感じ取った際、ゴジラは真っ先にアンギラスに偵察を命じている(ここでは「ていさつにゆけ」などといった日本語のセリフが吹き出しで表示される)。ただ、アンギラスは海辺で待ち構えていた防衛隊に返り討ちにされ、偵察の役目を果たすことなく帰路につくのだが。
さて、ヒーローゴジラに対する悪の新怪獣は、サイボーグ怪獣ガイガンである。これが悪の魅力を体現したような素晴らしい怪獣で、雁や鷹といった鳥類をメインモチーフとしつつ、派手なカラーリングのボディに真っ赤なゴーグル状の単眼、鋭いカマのような手足、そして腹部の回転ノコギリ。全身に鋭利な刃物を満載した物々しさとサイボーグらしいスマートさを両立させたデザインは理屈抜きにかっこいい。東宝怪獣らしからぬ洗練されたフォルムとカラーリングは今も色褪せることはなく、未だに根強い人気を誇る名怪獣だ。デザイナーは少年マガジンでイラストレーターをしていた水氣隆義。しかし東宝はデザイナーが誰なのか詳しく把握しておらず、長らく「マガジンのミズキ」としか伝わっていなかった。同誌で連載していた水木しげるのデザインではないか、などという噂も囁かれていたが、2008年になってようやく、水氣が自身のwebサイトにて自分がデザイナーであると公表し、真相が判明した。水氣はガイガンのデザイナーが不明だったことを知らず、ネットサーフィンをしていて初めて知ったのだという。
劇中ではキングギドラとともに宇宙から飛来、東京の街を破壊する。炎に照らされた姿が悪魔めいていて実に美しい。スチール写真などでは額からレーザー光線を発射しているが、劇中では未使用。戦闘機をひとつひとつ手で叩き落とすという手間を掛けている。ゴジラ・アンギラスとの戦闘では、アンギラスをカマでボコボコにする他、空中からの高速体当たり&回転ノコギリでゴジラに流血させている。ただ、ガイガンよりもキングギドラよりも、一番強いのは敵の本拠地たるゴジラタワー。口からのレーザー光線は、ゴジラに瀕死の重傷を負わせるほどの威力である。このタワーだけで地球侵略できたんじゃないかな、などというのは禁句か。
本作は第一作以来長らくゴジラを演じ続けてきた中島春雄の引退作となった。また「ウルトラセブン」でアンヌ隊員を演じたひし美ゆり子がヒロインの一人を演じている。最後に余談だが、虫が苦手な人は注意して鑑賞した方がいいかもしれない。
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