「大魔神」(1966)……特撮と時代劇が融合した三部作

製作国:日本

監督:安田公義

製作:永田雅一

企画:奥田久司

脚本:吉田哲郎

撮影:森田富士郎

美術:内藤昭

造型:高山良策

編集:山田弘

音響効果:倉嶋暢

音楽:伊福部昭

特技監督:黒田義之

助監督:西沢鋭治

出演:高田美和、青山良彦、藤巻潤他


 戦国時代、丹波の豪族・花房忠清は家臣の左馬之助に謀反を起こされ、命を落とす。時は流れ、左馬之助は暴虐の限りを尽くしていた。左馬之助は魔神の山に隠れ住む花房の子供の抹殺と神像の破壊を家来に命じる。しかし神像に手を出すやいなや、雷と地割れが起こり、さらに神像は小笹の意志に応えるように動き出し、恐るべき形相の魔神となって左馬之助の城に進撃するのであった。


 本作は大映京都撮影所が制作した特撮映画で、「ガメラ対バルゴン」と同時上映された。特撮映画の新作二本立ては東宝もなし得なかったものである。戦国時代が舞台であることからも解るように、特撮作品では珍しく時代劇となっているのが最大の特徴。監督の安田公義は「座頭市」や「眠狂四郎」などのシリーズを手がけた時代劇の名手。また大魔神の造形に高山良策、音楽に伊福部昭と、円谷特撮と縁の深いスタッフも関わっている。


 大魔神の正式な名称は阿羅羯磨あらかつま。普段はハニワのような柔和な表情をしているが、ひとたび動き出すと憤怒の形相に切り替わる。様々な神通力を用い、高速で空を飛ぶこともできるという、割となんでもありなキャラクターである。スーツアクターを務めたのは、プロ野球選手の橋本力。スーツの目の部分がくり抜かれているため、中の橋本の目が露出しており、これによって作り物の目とは比べ物にならないリアルな眼力を実現、強い印象を与えている。

 そして凄まじいのは、大魔神は怒れる神であり、明確に人を殺す意志を持っていること。大魔神は逃げる人々を掴み上げ、壁に押し付け、あるいは踏みにじり、直截的に殺していくのである。先述したナマの眼力とも相まって、たいへん恐ろしい。怪獣映画は数多くあるが、この生々しい迫力と恐怖をもたらしてくれるのは大魔神くらいである。


 特撮面ではミニチュアセットの作りにも注目したい。大魔神のサイズがそこまで大きくないため、ミニチュアが普通の怪獣映画よりも精巧に作り込まれているのである。瓦の一枚一枚まで同じスケールで再現されており、真に迫るリアリティを生んでいる。大魔神の身長は4、5メートルほどだが、戦国時代ならこれでも充分に巨大であり、人間とも同じ画面に収まれる絶妙のサイズ感である。


 大魔神はシリーズ化され、一年の間に二本の続編が矢継ぎ早に制作された。二作目「大魔神怒る」は湖の守り神として登場し、水を割る能力を披露。三作目「大魔神逆襲」では魔神の使いとなるタカが登場、また腰につけた刀を初めて使用し、悪の領主を刺し殺している。シリーズはこの三作のみだが、今でもガメラに並ぶ大映特撮を代表するキャラクターとして認知され、撮影時に使用された魔神像も保管されている。2010年には「大魔神カノン」というテレビシリーズも放送されている。

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