「大怪獣決闘ガメラ対バルゴン」(1966)……大人向けな雰囲気ただよう昭和ガメラ第二作

製作国:日本

監督:田中重雄

製作:永田雅一

企画:斉藤米二郎

脚本:高橋二三

撮影:高橋通夫

特撮監督:湯浅憲明

美術:柴田篤二

編集:中静達治

音楽:木下忠司

特技・合成:金子友三

特技・撮影:藤井和文

特技・助監督:阿部志馬

特技・操演:恵利川秀雄

特技・美術:山口熙、井上章

出演:本郷功次郎、江波杏子、夏木章他


 「大怪獣ガメラ」のラストにおいて、用途不明のカプセルロケットで宇宙へ追放されたガメラであったが、そのロケットが隕石と衝突、破壊されてしまう。ガメラは脱出に成功し、再び地球に舞い戻ると、黒部ダムを壊滅させてどこかへ飛び去っていく――という、豪快な幕開けを見せるガメラシリーズ第二作が「ガメラ対バルゴン」である。この時点でもうなんでもありな感じで、ガメラがどんな活躍を見せてくれるか期待させられてしまうが、今回はガメラの出番はあまりない。フィーチャーされるのは新怪獣バルゴンと、バルゴンを巡る人間模様である。


 バルゴン誕生のきっかけとなるのは、ひとつの宝石である。主人公たちは、戦時中、ニューギニアの洞窟に隠したという巨大なオパールを捜し当てて、日本に密輸しようと企む。彼らはみごとオパールを見つけ出すものの、一人が宝石を独占すべく、他の仲間を裏切って一人で帰国してしまう。しかし、その宝石の正体は怪獣バルゴンの卵だったのだ。日本へ帰る船の中で、水虫治療用の赤外線を浴び続けた卵は急速に成長、孵化した後はあっというまに巨大化し、神戸の港を蹂躙する。


 バルゴンは四足歩行のトカゲのような見た目で、頭部の一本角の長く伸びる舌が特徴。舌の先から冷凍液を噴霧し、背中からは虹色の殺人光線を放射するという、見た目によらず芸達者な怪獣である。

 ガメラとは大阪城前で交戦。今回のガメラは主に四本脚で活動しており、四足怪獣同士での戦いとなっている。怪獣映画全体を見渡しても珍しい絵面である。バルゴンは顔面にガメラのパンチを食らって流血するも(流血描写はゴジラシリーズとの差別点として、後の作品でも多用される)ガメラを完全に氷漬けにしてしまうという完勝ぶりを見せつける。ガメラはこれ以降、映画終盤まで出番なし。物語はバルゴンと人間の攻防に移っていく。


 導入部の大胆さとは裏腹に、全体的には手堅く、マジメな作りの作品である。子供の視点を多分に意識していた前作とは異なり、今回は子供が一切登場しない。宝石の密輸から始まるストーリーも、人の欲の愚かさをテーマにしており、悪役の自分本意な外道ぶりや、主人公とヒロインのロマンスなどなど、子供置いてけぼりのシリアスかつサスペンス的な作風。ただ特撮監督の湯浅憲明はもっと子供に楽しんでもらいたいという意向があったらしく、本編監督も兼ねるようになった次作以降は、子供を中心に据えた明るい作風となり、ゴジラシリーズとも異なる独自のカラーを確立していく。

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