「怪獣大戦争」(1965)……シリーズ唯一のゴジラ宇宙遠征

製作国:日本

監督:本多猪四郎

製作:田中友幸

脚本:関沢新一

撮影:小泉一

美術:北猛夫

編集:藤井良平

音楽:伊福部昭

特技・撮影:有川貞昌、富岡素敬

特技・操演:中代文雄

特技・美術:渡辺明

特技監督:円谷英二

出演:宝田明、ニック・アダムス、田崎潤他


 ゴジラ、ラドン、キングギドラの三体が再集結した作品。ゴジラが登場する映画としては六本目に当たり、「三大怪獣地球最大の決戦」を踏まえた物語となっている。そしてゴジラ映画では初めて宇宙が舞台となり、宇宙人まで登場する。


 ストーリーは、木星近くで発見された新惑星「X星」へと調査へ赴くところから始まる。X星では人間が文明を築いていたが、怪物ゼロ(キングギドラ)の存在に悩まされていた。そこで、キングギドラを撃退するために地球のゴジラとラドンを貸してほしい、と主人公たちに申し入れる。ゴジラとラドンはX星人の円盤でX星人の円盤で宇宙へと運ばれていく。これで一件落着かと思われたが、X星人は二怪獣とキングギドラを電磁波で支配下に置き、侵略兵器として地球へ送り込んでくるのであった。


 地球で大暴れしていたゴジラが、今回はついに宇宙へ進出。X星でラドンとともに戦いを繰り広げる、というのがまず第一の見どころ。「三大怪獣~」では仲違いしていた両者であったが、今回ははじめから共闘体勢。キングギドラをあっという間に退けてしまう。キングギドラ、こんなに弱かったか? と思う間もなく、例の「シェー」が飛び出す。シェーとは赤塚不二夫が1962年から連載を始めた漫画「おそ松くん」の中に登場するポーズで、当時の流行となっていたのを、本多猪四郎、円谷英二両名のアイデアで取り入れたものである。劇中には登場しないが、主要キャストがゴジラとともにシェーをしている姿も写真に残っている。


 このシェーに関して批判的なファンも少なくないが、理屈や固定観念に囚われず、人気怪獣の戦いと壮大なスケールのストーリー、個性豊かなキャスト陣の名演を楽しまなければ損であろう。X星へ向かうためのロケット・P-1号や、X星の岸壁から出てくる光線砲、そしてAサイクル光線車といったメカニックも素晴らしい。敵であるX星人も悪の魅力にあふれている。統制官が最後の最後まで日和ることなく自らの理想と信念に殉じる姿は鬼気迫るものがある。彼の最後の台詞は、本作最大の名台詞として見る者の心に刻まれるだろう。


 前作と比較した場合、モスラが出ていない分スケールダウンしたように感じられるかもしれないが、方向性の全く異なる作品であることは見れば解るだろう。「三大怪獣~」は人気怪獣大集合のお祭り映画だったのに対し、こちらは「地球防衛軍」等のSF作品の流れを汲む一本なのである。「怪獣大戦争」とは、怪獣、SF、超兵器、そして伊福部音楽と、東宝特撮を象徴する要素を全部突っ込んだ娯楽大作なのだ。またシリーズで初めて宇宙人や近未来的な要素を導入した作品としても重要であり、ゴジラ映画はこれ以降、さらに作風の幅を広げていくことになる。


 本作は1977年に短縮版が再上映された。その時のタイトルは「怪獣大戦争キングギドラ対ゴジラ」。またしてもラドンがハブられている。何故……。

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