「大怪獣ガメラ」(1965)……ガメラはここから始まった

製作国:日本

監督:湯浅憲明

製作:永田雅一

企画:斉藤米二郎

脚本:高橋二三

撮影:宗川信夫

編集:中静達治

音楽:山内正

特技・合成:藤井和文

特技・撮影:築地米三郎

特技・助監督:石田潔

特技・操演:関谷治雄

特技・美術:井上章

出演:船越英二、姿美千子、霧立はるみ他


 日本の怪獣映画は東宝の独擅場であった。そこに殴り込みをかけたのが大映である。「宇宙人東京に現わる」(1956)や「鯨神」(1962)など特撮主体の作品を多く手がけていた大映は、63年、満を持して怪獣映画の制作に着手。その第一作となった「大群獣ネズラ」は、本物のネズミをミニチュアの街で暴れさせるというバート・I・ゴードン的な映画だったのだが、大量のネズミを使ったせいで撮影所の衛生状態は劣悪で、スタッフが健康を害し、近隣住民からも苦情が殺到。撮影続行が困難となり、制作中止となった。その後に制作されたのが「大怪獣ガメラ」である。


 ガメラはその名の通り、亀の怪獣。かつてアトランティス大陸に生息していたが、北極圏の氷の下で眠りについていた。ある時、北極圏を横断しようとしていた某国の戦闘機が撃墜され、搭載していた核兵器が爆発。その影響で、ガメラは現代に蘇った。その後、ガメラは世界中を飛び回る。そう、飛ぶのである。

 この飛行能力こそがガメラ最大の特徴であると言えよう。甲羅の中に足を引っ込め、ジェット噴射で高速回転しながら空飛ぶ円盤のように飛行する。この「亀が飛ぶ」というアイデアは、ガメラのデザインが決定する前から存在したらしく、それを「ジェット噴射で飛ぶ」という形に発展させたのが脚本家の高橋二三。高橋はさらにそこから「火をエネルギー源とする」という設定に繋げ、ガメラというキャラクターが煮詰まっていったのだ。


 そしてガメラの特徴としてもう一つ、子供好きという性格が挙げられる。エネルギーを求めて暴れまわるガメラであったが、崩れた灯台から落ちた子供を助ける、という一面も見せる。まあ、その灯台を壊したのはガメラ自身なのだが――。なお、助けられた子供はこの後ガメラを追い続け、ラストまで登場する。あくまで大人の物語である東宝の作品とは異なる、子供の視点をふんだんに取り入れた作風であり、子供とガメラの遭遇と別れまでを描いた一種のジュブナイル作品としても見ることができるだろう。


 特撮面では、予算と技術の問題から、相当な試行錯誤が重ねられたという。スタッフ全員が怪獣映画は初めてで、スタジオも特撮専門のものではなかったとのことだが、ミニチュアや合成のクオリティは高い。なお60年代後半でもまだモノクロなのも機材不足によるもので、シリーズでは唯一のモノクロ作品となっている。

 後の作品ではガメラは正義の味方となっていくが、ここでは人類の脅威として存在する。ひたすらに破壊を尽くし、世界を混乱に陥れるガメラの姿は、本作でしか見られない。ゴジラに先駆けて東京タワーを破壊するシーンなども見どころだろう。ちなみにポスターにある新幹線に食らいつく場面は本編には存在しない。

 一方、人類もガメラを黙ってみているわけではない。自衛隊の攻撃は通用せず、正攻法では勝てないため、ガメラをひっくり返す作戦を実行。見事成功し、あとは自力で起き上がれないガメラの餓死するのを待つだけ……といくはずもなく、その後は飛んで逃げられてしまうのだが、この時点ではガメラが飛ぶことを誰も知らないので仕方のないことか。そして最後の秘策「Zプラン」が登場。その全容はぜひ自分の目で確かめてほしい。


 本作は大ヒットし、翌年には第二作「大怪獣決闘ガメラ対バルゴン」が公開された。以降もシリーズが続き、「ゴジラ」以外では唯一の、長期に渡り定期的に新作が公開される怪獣映画となった。

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