「フランケンシュタイン対地底怪獣」(1965)……原爆が産んだ巨人の恐怖と悲哀
製作国:日本
監督:本多猪四郎
製作:田中友幸
脚本:馬淵薫
撮影:小泉一
美術:北猛夫
編集:藤井良平
音楽:伊福部昭
ストーリー:ジェリー・ソウル
特技監督:円谷英二
出演:ニック・アダムス、高島忠夫、水野久美他
本作は、東宝とアメリカのベネディクトプロが合同で制作した、日米合作の怪獣映画である。元になったのは、ウィリス・オブライエンの手による「キング・コング対フランケンシュタイン」という企画。色々あってコング映画とフランケンシュタイン映画が別々で作られることになり、その片割れが本作というわけだ。最初は「ガス人間第一号」(1960)の続編として企画され、次にゴジラを出すことも検討されたが、最終的には新怪獣バラゴンがフランケンシュタインの対戦相手に起用された。巨人と怪獣の対決といえば「ウルトラマン」だが、本作はそれに一年先駆けている。
さてフランケンシュタインといえば、ホラーの古典「フランケンシュタイン」に登場するモンスターだ(あくまでフランケンシュタイン博士によって作られた怪物のことであり、怪物そのものをフランケンシュタインと呼称するのは誤りである)。本作では大戦末期、ドイツから広島へ運ばれてきた「不死身の心臓」が、原爆の放射線によって突然変異的な成長を遂げたもの、という独自の設定。もともと子供のようなサイズだったが、人間よりも巨大になり、檻へ閉じ込められ、鎖に繋がれてしまう。本来は温厚で気弱な正確であるが、その巨大さと、言葉を話せないがために人間とは相容れない。その悲哀と、それを描くほど浮き彫りになる巨人という存在の異常さと怪奇性。「ゴジラ」シリーズが明るく楽しい路線へと切り替わっていく中で、このホラータッチかつアダルティな作風はかなり異色である。5メートルから20メートルという巨人のサイズも、リアルな恐怖感の演出に一役買っているだろう。ミニチュアも従来の怪獣映画より大きめの縮尺で、細部まで作り込まれており、照明の演出も相まって、実写と見紛う完成度である。
物語後半で、巨人と対決を繰り広げるのが、地底怪獣バラゴンである。ここまでの東宝怪獣はゴジラとの差別化を図るべく、トゲを背負わせたり空を飛ばせたりしていたが、バラゴンはゴジラ以来の王道的二足歩行怪獣となっている。着ぐるみは従来のものよりさらなる軽量化が図られ、吊り上げによってジャンプさせるなど、俊敏な動きの演出を見せてくれる。また口から熱線を吐くが、これは武器として扱うだけではなく、地中へ潜る際に、土壁を崩して穴を掘りやすくするためにも用いられる。何気ないシーンだが、怪獣の普段の生態を描写した、珍しい演出でもある。
ちなみにバラゴンの着ぐるみは、「ウルトラQ」(1966)のパゴスに流用され、「ウルトラマン」(1966)でもネロンガ等に改造されているが、「怪獣総進撃」(1968)では再びバラゴンとして蘇っている。
本作はラストシーンが二通りある。一方は海外版のために撮影されたものだったが、結局はカットされ、日本でのテレビ放送時に日の目を見たという。現在発売されている国内版のソフトには、両方のエンディングが収録されている。
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