「三大怪獣地球最大の決戦」(1964)……宇宙超怪獣キングギドラ降臨
製作国:日本
監督:本多猪四郎
製作:田中友幸
脚本:関沢新一
撮影:小泉一
美術:北猛夫
編集:藤井良平
音楽:伊福部昭
特技・合成:向山宏
特技・撮影:有川貞昌、富岡素敬
特技・美術:渡辺明
特技監督:円谷英二
世界を襲う異常気象。日本では一月だというのに夏のような暑さで、夜空には流星が降り注ぐ。そんな中、金星人を名乗る預言者の女が東京に現れる。彼女の言葉に呼応するようにラドンとゴジラが相次いで出現。さらに黒部ダムに落ちた隕石から宇宙超怪獣キングギドラが復活する。地球の危機に立ち向かうべく、モスラが日本へとやってきて、ゴジラとラドンに協力を要請する――。
本作は1964年末に公開された。もともと黒澤明の「赤ひげ」が公開予定だったが、撮影が長引いており、その穴を埋めるために突貫工事で制作された。そのため、この年は「モスラ対ゴジラ」「宇宙大怪獣ドゴラ」そして本作と、東宝怪獣映画が三本も公開された異例の年となった。特にゴジラ映画が同じ年に二本公開されたのはこれ以降も例はない。
ストーリーの設定は「モスラ対ゴジラ」「空の大怪獣ラドン」を包括しており、三大怪獣としてゴジラ、ラドン、モスラが登場する。モスラは双子が生まれていたが、片方は死んでしまったらしく、一匹のみでの登場である。またゴジラとラドンの戦闘が初めて描かれているのも見逃せない。空を飛ぶラドンに対してゴジラはほとんど対抗するすべがない(放射能火炎も、第一作のようなガス状に戻っており、威力がない)で、一方的にやられるばかりだが、終盤には互角の戦いを見せている。
そして本作最大の目玉は、何と言っても新怪獣キングギドラの登場である。黄金の鱗に覆われた体と巨大な翼、三首に二股の尻尾。今までのあらゆる怪獣を凌ぐ圧倒的なインパクトが凄まじい。初登場シーンも格の違いを見せつけるもので、割れた隕石から爆炎が舞い上がり、炎の塊が爆発を繰り返すうちにキングギドラの形になっていくという演出は強い印象を残してくれる。
キングギドラの武器は、その翼で巻き起こす突風と、口から吐き出す引力光線。映像では分かりづらいが、反重力を起こすことで地上のものを巻き上げて破壊する光線である(らしい)。引力光線は稲妻のようなジグザグの軌道を描いているが、これは首の向きとミニチュア破壊のタイミングを合わせるためのアイデアであった。三本の首は操演によって動かされているのだが、特定の方向を正確に向かせることが難しかったのである。
強大なキングギドラに対し、ゴジラ、ラドン、モスラが戦いを挑むわけだが、先述したようにゴジラとラドンは決闘の真っ最中。二匹はモスラの言葉に耳も貸さず、結果、モスラ一匹でキングギドラと戦うハメになる。今回のモスラはずっと幼虫のままで、キングギドラに手も足も出ない。成虫であれば、あるいは双子の片割れが生きていれば、もう少し善戦できたのだろうか。最後にはゴジラとラドンもモスラとともにキングギドラに立ち向かう。三体の特徴を活かした連携プレイは必見である。
キングギドラは、本作以降もシリーズを代表する悪役怪獣として何度も再登場することになる。それに対抗するゴジラは地球を守るヒーローのような役回りになっていくが、本作でもゴジラ自身が語っているように、人類への敵意をなくしているわけではない。正義の味方というよりは、地球怪獣の総大将のような立ち位置を確立していく。
本作は東宝チャンピオンまつりで再映された。その時のタイトルは「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 地球最大の決戦」であり、ラドンがハブられている。悲しい。
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