「GODZILLA」(1998)……ついに実現したハリウッド版ゴジラ

原題「GODZILLA」

製作国:アメリカ

監督:ローランド・エメリッヒ

製作:ディーン・デヴリン

製作総指揮:ローランド・エメリッヒ、ウテ・エメリッヒ、ウィリアム・フェイ

原案:テッド・エリオット、テリー・ロッシオ、ディーン・デヴリン、ローランド・エメリッヒ

脚本:ディーン・デヴリン、ローランド・エメリッヒ

撮影:ウエリ・スタイガー

音楽:デヴィッド・アーノルド

出演:マシュー・ブロデリック、ジャン・レノ、ハンク・アザリア他


 フランスがムルロア環礁で核実験を行った。その後、南太平洋を航行する日本の漁船が謎の生物に襲撃されて沈没。唯一の生存者は、うわごとのように「ゴジラ、ゴジラ」と繰り返す。それは日本に伝わる海神の名前であった。生物学者のニックは、核実験の影響で誕生した新種の生物の仕業だという仮説を立てる。そしてついに巨大生物ゴジラがニューヨークに上陸、街を蹂躙する――。


 トライスター・ピクチャーズによる「ゴジラ」シリーズのハリウッド版。制作自体は92年頃に決定していたが、東宝との交渉の難航、監督の降板などの紆余曲折があり、最終的には「インデペンデンス・デイ」のローランド・エメリッヒが監督として起用された。ファンの間ではエメリッヒの名を取って「エメゴジ」などと呼称されている。

 本作は日本版ゴジラシリーズとの繋がりはなく、ゴジラの設定・デザインも一新されており、より生物としてのリアリティが追求された怪獣となった。特にデザインはパトリック・タトプロスによって大幅なアレンジが加えられ、ティラノサウルスのような獣脚類型肉食恐竜の体型へと変貌した。日本版とは似ても似つかぬデザインには賛否あるが、もともと日本版ゴジラも肉食恐竜がモデルで、当時の最新の復元予想を反映させたもの。時代の流れによってデザインにも変化が生じたのだ。東宝もこのデザインを認め、「背ビレを三列に」程度の注文しかしなかったという。またどんな攻撃も受け付けなかった本家ゴジラとは異なり、通常兵器でも対処可能な怪獣として描かれている。ただし防御力が低い代わりに高速で駆け回ることが可能。このスピードこそがハリウッド版最大の武器であり、終始アメリカ軍を翻弄する。


 物語の内容としてはオーソドックスな怪獣映画のスタイルを踏襲しており、序盤は都市部へと近付くゴジラの恐怖とその生態の調査を描き、上陸後は都市部のパニック、そしてアメリカ軍とゴジラの攻防を見せる。良く言えば王道、悪く言えば使い古された展開だが、テンポのいいドラマとド派手な映像でケレン味たっぷりの怪獣映画に仕上がっている。上陸直後、ゴジラの脚だけを映し、市民の目線からその巨大さを印象づけつつ、日常が混乱に染まっていくさまをじっくりと描くシークエンスは否が応でも期待感を高めさせてくれる。またゴジラが敏捷に動き回るという設定によって生まれた、高層ビル群の中を駆け回りながらの戦闘ヘリとの戦い、潜水艦との水中戦なども、それを映像化するための技術がなければ不可能だったシーンで、怪獣映画としては今までにない斬新な絵面の目白押しである。日本版ゴジラに比べて顔と手がでかいので、ヘリとの格闘も迫力満点だ。


 本作はサターン特殊効果賞を受賞し、特撮は高い評価を受けた。しかし国内外のゴジラファンからは酷評を受けており、第19回ゴールデンラズベリー賞の最低リメイク賞も受賞している。本作以降に公開された日本版でも「あれはゴジラではない」といった台詞があったり、本作のゴジラに似せた怪獣をゴジラに瞬殺させたうえ本作のゴジラに対する悪口とも取れる台詞を言わせたりしている(公式でこういうことをやるのはどうなのか?)。しかし怪獣映画としてはよく出来ていて、見るべきところは多い。「巨大怪獣が町中を高速で走り回る怪獣映画超大作」はこれが唯一無二であり、他に似たような作品もない。


 本作の続編としてテレビアニメ「Godzilla: The Series」が制作された。日本でも放送されたが、国内版のソフトは未発売である。

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