「モスラ3 キングギドラ来襲」(1998)……三部作完結!モスラは時間を超えて

製作国:日本

監督:米田興弘

製作:富山省吾

脚本:末谷真澄

撮影:関口芳則

特殊効果:渡辺忠昭

美術:櫻木晶

造型:小林知己

編集:小川信夫

音楽:渡辺俊幸

特殊技術:鈴木健二

特殊技術・撮影:江口憲一、桜井景一

特殊技術・美術:大澤哲三

特殊技術・操演:小川誠

特殊視覚効果プロデュース:小川利弘、小野寺浩、大屋哲男

造型プロデュース:若狭新一

助監督:手塚昌明

出演:吉澤拓真、小林恵、建みさと他


 平成モスラ三部作の完結編。新モスラ最後の敵に抜擢されたのは、東宝特撮最大の悪役怪獣、キングギドラ。モスラとキングギドラの戦いは昭和ゴジラシリーズでも何度か描かれたが、一対一での対決はこれが初めて、かつ成虫モスラとキングギドラの共演もなにげに初である。監督には第一作目の米田興弘が再登板、特技監督は川北紘一から鈴木健二にバトンタッチ。第一作と同じく山間部をメインの戦場としつつ、より激しい空中戦を描き、平成モスラシリーズの総決算にふさわしい作品となっている。


 キングギドラは直近では「ゴジラvsキングギドラ」にも登場していたが、あちらが超ドラゴン怪獣という肩書だったのに対し、こちらは昭和版と同じ「宇宙超怪獣」。また黒幕に操られているのがお約束となっていたが、今回は「三大怪獣 地球最大の決戦」以来、久々に自分の意志だけで行動している。

 本作のギドラ族は宇宙のあらゆる星に大量絶滅をもたらした存在であるとされ、一億三千万年前の地球でも恐竜を滅ぼしている。現代の地球に飛来したキングギドラは、新たなエネルギー源として人類の子供に狙いを定めるのだ。その恐るべき性質によってモルからは「恐怖の大魔王」と呼称される。本作が公開された90年代末の、「ノストラダムスの大予言」ブームを取り入れた設定だ。当時はとかくこの手の作品が多かったものである。

 さて、キングギドラといえば引力光線と暴風攻撃がおなじみの武器だが、超進化したモスラに対抗するためか、さまざまな新能力を身に着けている。反重力エネルギーを翼から放つ反重力光線、引力光線を三つ首から同時に発射する引力光線トリプルトルネードなどの新たな必殺技に加え、バリアを張ってモスラの攻撃を防ぐなどの防御手段も習得。さらに街を破壊しつつ餌とする子供たちをテレポートさせる、催眠術によってロラを洗脳するといった超能力、それを有効活用する知性までも併せ持ち、まさしく大魔王のような存在となっている。戦闘力はチート的進化を遂げたレインボーモスラをも上回り、モスラを一方的にボッコボコに。このシリーズ、モスラが毎回一度はひどい目にあうが、今回は一段と無残なやられっぷりである。


 敗北を喫したモスラは、最終手段に打って出る。それは「1億三千万年前へとタイムスリップして、未成熟なキングギドラを倒す」というもの。何でもあり感もここに極まれりと言った感じだが、時間旅行は一方通行で、一度過去に行けば二度と現代に戻れない。それでもモスラは地球を護るために光速モードへと変身、時を超えて過去のキングギドラを倒しに行くのであった。歴史改変で怪獣をどうにかしようという発想は、同じくキングギドラ登場作である「ゴジラvsキングギドラ」と似通っているが、未来人がワープ装置でゴジラを消し飛ばしたのに対し、こちらは白亜紀でのモスラとキングギドラの戦いを見ることができる。CGとロボットを併用した恐竜の演出はまあ正直言ってヘボいが、キングギドラが恐竜を丸呑みするシーンは見どころである。


 最後は再び現代へと時代を映し、最終形態・鎧モスラエターナルのお披露目で締め。目が丸っこく、優しげな顔つきになっているのは、戦いのさだめから解放されたことを現しているのか。ともかくこれにて平成モスラシリーズは終幕、子供とモスラの命を護る物語は無事完結となったのである。


 本作の怪獣造形は若狭新一が手掛けている。若狭は海外から素材を取り寄せ、より生物感のあるモスラを造形した。モスラの各形態に加え、キングギドラも現代と過去の両方が別々に作り起こされており、原始モスラもいるため、モスラとキングギドラしか登場しないわりに造形物はかなり多く、それらを見比べるのも本作の楽しみの一つであろう。

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