「巨大怪獣ザルコー」(1997)……生身で怪獣に立ち向かった一人の男の物語

原題「ZARKORR! THE INVADER」

製作国:アメリカ

監督:アーロン・オズボーン

製作:カーク・E・ハンセン、サリー・クラーク、ロブ・マーティン、スティーヴ・セクレスト、ロバート・タルボット

製作総指揮:アルバート・バンド

脚本:ベンジャミン・カー

撮影:ジョー・C・マックスウェル

音楽:リチャード・バンド、ファズビー・モース

出演:リス・クリスチャン・プー、デプライズ・グロスマン、トリー・リンチ他


 1998年に公開されたハリウッド版「GODZILLA」は、ゴジラ初の海外作品ということもあって公開前から大きな注目を集めていた。そうなるとやはり便乗作品が出てくるもので、この時期のアメリカでは怪獣映画がにわかに盛り上がった。もっとも、どれもこれも低予算のB級映画だったのだが。

 今回紹介する「巨大怪獣ザルコー」もそんな一本である。「ザルコー」はアメリカのフルムーン・エンタテイメント社による制作で、日本では公開されていないが、VHSでリリースされた。そのキャッチコピーが「ゴジラだけじゃなかった!」なのだから、便乗根性丸出しである。


 映画はいきなり怪獣の登場シーンから始まる。場所はカリフォルニアのはずれ、山がいきなり発光したかと思うと土砂崩れが発生。山の中から身長50メートルの巨大怪獣が現れる。一方、冴えない郵便局員のトムはいつもどおりアニメに夢中。怪獣出現のニュースなど知る由もない。そんなトムの前に突如現れたのが、手のひらサイズの金髪ブロンド美女。この小美人(?)は銀河連邦からやってきたと自己紹介し、トムに怪獣のニュースを見るように促す。ようやく怪獣出現を知るトムに、金髪小美人は言い放つ。「あなたが怪獣を倒すのよ」と――。


 いわく、これは地球人に対するテストであるという。怪獣ザルコーを倒せば、地球は救われる。倒せなければ、ザルコーによって滅ぼされる。地球人の中でもっとも平均的な能力を持つトムが、地球人代表に選ばれ、ザルコーと戦うはめになったのだ。

 テストのルールは以下の通り。

「ザルコーにはどんな武器も効かない。化学兵器や核兵器も無効である」

「ザルコーの倒し方は自分で見つけなければならない」

 そして小美人はヒントを一つ残していく。

「ザルコーを滅ぼす力はザルコー自身が持っている」

 それだけ言い残すと小美人は消え去って、これ以降一切登場しない。テストが終了しても全く顔を見せないのだから、見た目通りの軽薄さである。


 とんでもない運命を背負わされてしまったトムは、とりあえずテレビで見た動物学者を味方につけるべく、テレビ局に乗り込む。彼は自分の置かれた状況を必死に説明するが、誰も信じるはずはない。仕方がないので彼は拳銃を奪って動物学者を人質にとり、宇宙人の存在を信じる警察官を仲間に加え、決死の逃亡劇へ。警察に追われる身になってしまい、もはや怪獣退治どころではない。その間にも怪獣ザルコーは、目からレーザーを出して街を破壊しつづけるのだ。

 特撮シーンは全体的に見れば少なく、軍との戦闘も街の破壊も、ほとんどがアナウンサーによる実況で済まされてしまう。そのあたりは低予算感丸出しだが、着ぐるみ&ミニチュアという海外では珍しい方式で撮られているのは特筆すべきか。明らかに日本の怪獣映画に寄せた作りだが、怪獣映画のパロディをやろうとしたのかマジの怪獣映画を撮りたかったのかは判別不能である。さて、物語の核となるザルコーの倒し方についてだが、分かる人にはすぐ分かってしまうのだろう。ザルコーがレーザーを発射したあたりで。


 怪獣ザルコーのデザインはゴジラスタイルの体型に、大きな角を二本はやしたオーソドックスなもの。アメリカ制作の映画にもかかわらず、日本の怪獣っぽい見た目だが、それもそのはず、造形を手掛けたのはレインボー造型企画なのだ。レインボー造型企画は「仮面ライダー」シリーズなどの東映作品を中心に着ぐるみ造形を請け負っている会社で、最近ではNHKで放送された「トクサツガガガ」にも参加していた。劇中に登場したザルコー以外にも、ワシ型やカマキリ型の怪獣も依頼されていたという。

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