「ゴジラ」(1984)……平成シリーズに繋がるゴジラ復活作

製作国:日本

監督:橋本幸治

製作:田中友幸

原案:田中友幸

脚本:永原秀一

CG:土屋裕

撮影:原一民

特殊効果:渡辺忠昭、久米攻

視覚効果:宮西武史

美術:桜木晶

造型:安丸信行

編集:黒岩義民

音楽:小六禮次郎

特技・合成:真野田嘉一

特技・撮影:山本武、大根田俊光

特技・操演:松本光司、宮川光男

特技・美術:井上泰幸

特技監督:中野昭慶

出演:田中健、沢口靖子、宅麻伸他


 75年の「メカゴジラの逆襲」でゴジラシリーズは一旦の終了を迎えたが、東宝内部ではゴジラ復活のための企画が動き続けていた。脚本家の中西隆三や村尾昭、関沢新一、SF作家の光瀬龍や眉村卓らにシナリオの執筆が依頼されていたが、これらは実現には至らなかった。一方で世間では大人向けの関連書籍の展開や「宇宙船」の創刊による特撮作品の再評価の高まりと、ゴジラ映画の再上映によって、ファンの間でもゴジラ復活を望む声が高まりつつあった。そんな中、83年に新宿ミラノ座で開催された「ゴジラ1983 復活フェスティバル」の好成績を受けて、東宝はついにゴジラ復活へのゴーサインを出し、新作映画の制作が本格的に始まったのである。そして84年、ゴジラ生誕30周年の年に、9年ぶりとなる新作「ゴジラ」が公開されたのだ。


 第一作目と同じタイトルを採用していることからも解るように、本作のコンセプトは「原点回帰」。昭和シリーズ後期の軽快かつヒロイックなゴジラではなく、初代のような鈍重かつ人類の脅威としてのゴジラが描かれている。また核エネルギーを吸収するという設定が加えられている点も、核兵器の申し子たる初代ゴジラのイメージを踏襲したものだろう。なお本作のゴジラは、初代以降初めて確認された二匹目、という設定で、「ゴジラの逆襲」から「メカゴジラの逆襲」までのシリーズが丸ごとなかったことにされている。

 ゴジラの演出は今までと同じく着ぐるみがメイン。9年の空白を経て造形の技術も格段に進歩しており、質感のリアルさは今までの比ではない。また着ぐるみの他に「サイボット・ゴジラ」と呼ばれる、コンピュータ制御で動くロボットゴジラも作られた。身長4.8メートル、重さ1.2トンのこの巨大ロボットは、結局アップショットでしか使われなかったが、着ぐるみやパペットでは出来ない顔の動きを演出することに成功している。ただ着ぐるみとディテールが違いすぎてほとんど別人みたいになっているのだが。ところで、機械じかけの怪獣を撮影に使う映画といえばギラーミン版「キングコング」を思い出すが、このサイボットゴジラも等身大コングよろしく、撮影よりもプロモーションの方で大いに活躍したという。


 ドラマパートの方でもシリアスさが重視され、ゴジラ出現によって揺れる日本社会を描きつつ、米ソ対立下の緊迫した情勢などを反映している。ゴジラ対策のための閣議とゴジラの生態の解明が同時に進行するシナリオは後の「シン・ゴジラ」(2016)にも通じる点であり、怪獣映画であると同時に一種のディザスター・ムービーのような趣も醸し出している。

 ただゴジラの暴れっぷりは初代ゴジラには及ばない。ゴジラは身長80メートルに巨大化しているが、それでも新宿副都心の高層ビル群にすっかり埋もれてしまっている。さらにゴジラが大して動かないせいで、ビルの大きさに面食らって怯んでいるようにも見え、いまいち迫力にかけるというのが正直なところだ。しかしゴジラ迎撃のために出撃してくる秘密兵器スーパーXとの戦闘は、高層ビル街という地形を活かした演出が印象的であった。ちなみにスーパーXは80年代当時の技術でも十分に再現可能なのだという。ほんまか?


 アメリカでは「GODZILLA 1985」というタイトルで公開された。上映時間は大幅に短くなっているが、新規シーンが追加されており、「怪獣王ゴジラ」に出演したレイモンド・バーが同じ役で出演している他、ソ連のミサイルが事故ではなく故意に発射されたことになっている。ちなみにサイボットゴジラとレイモンド・バーは第6回ゴールデンラズベリー賞にそれぞれ最低新人賞と最低助演男優賞にノミネートされた。

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