死ぬまでに見たい怪獣映画
高橋めぐみ
序文:怪獣を取り巻く状況(2018年夏)
2004年。
第一作公開から50年目を迎えた「ゴジラ」シリーズは、この年に公開された「ゴジラ FINAL WARS」をもって、その歴史に終止符を打った。
2006年。
「ガメラ3~邪神覚醒~」から7年ぶりに公開された「小さき勇者たち~ガメラ~」は、その一作だけで後には続かなかった。
同じく2006年から2007年にかけて放送された「ウルトラマンメビウス」。このウルトラマン生誕40周年記念作品を最後に、テレビシリーズ新作の制作は一旦休止されることとなった。
ゴジラ、ガメラ、ウルトラマン。日本の特撮界を代表する作品が立て続けに終りを迎えた、2000年代中盤。毎年のようにゴジラの新作が公開され、テレビではウルトラマンが放送される――もはやそんな時代ではなくなっていた。日本の怪獣たちは、一旦の眠りについた。
一方、怪獣映画の本家本元であるアメリカでも、この頃、怪獣映画は敬遠される傾向にあった。その理由は1998年の「GODZILLA」、いわゆる「エメゴジ」の失敗を引きずっているためであった。しかしそんな中でも、いくつかの怪獣映画が生み出されている。
まず2005年の「キング・コング」。これは1933年に公開されたオリジナル版のリメイクで、時代設定やストーリーのプロットを流用している。監督は「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのピーター・ジャクソン。最新のCG技術がふんだんに使われ、怪獣だけでなく、30年代当時の町並みの再現にも一役買っている。
さらに2008年に公開された「クローバーフィールド/HAKAISHA」も、意味深なプロモーションが話題となったが、蓋を開けてみれば怪獣映画であった。ニューヨークを怪獣が襲う、というありがちな話だが、全編がハンディカメラによる主観映像となっており、逃げ惑う人々の視点だけで描ききった点が怪獣映画として斬新だった。
さらに2010年代に入ると、2013年に「パシフィック・リム」が公開。太平洋の底から現れる「KAIJU」に、二人乗りの巨大ロボット「イェーガー」で立ち向かうという内容。リアリティよりもケレン味をとった豪快なバトル描写は日本のマニアにも高く評価され、2018年には続編の「パシフィック・リム アップライジング」も公開された。
そして2014年、ゴジラ生誕60週年のこの年に公開されたのが、ハリウッド版第二弾となる「GODZILLA ゴジラ」である。制作は「パシフィック・リム」と同じレジェンダリー・ピクチャーズ。本作は過去のシリーズとの繋がりは一切なく、ゴジラの設定自体も一新されている。
この「GODZILLA ゴジラ」のヒットを受けて、日本でも東宝が国産ゴジラの復活に乗り出した。そして2016年に公開されたのが「シン・ゴジラ」である。総監督・脚本に「新世紀エヴァンゲリオン」の庵野秀明を迎えたことも大きな話題となり、平成以降のゴジラシリーズでは最高の観客動員数となった。さらに東宝は3Dアニメーション映画でも「ゴジラ」の新作を展開。三部作の第一章となる「GODZILLA 怪獣惑星」が2017年に、第二章の「決戦機動増殖都市」が2018年に公開された。
2017年、アメリカでは「キング・コング」シリーズの新作となる「キングコング: 髑髏島の巨神」が公開。本作から、レジェンダリー怪獣映画の設定を共有するクロスオーバー企画「モンスターバース」が正式に始動。2014年版「GODZILLA ゴジラ」もこの中に取り込まれた。2019年には、モスラ、ラドン、キングギドラが登場する「Godzilla: King of the Monsters」、そして2020年には「Godzilla vs. Kong」の公開が予定されている。
50年目に一旦終了した「ゴジラ」であったが、60年目以降は展開が活発化し、ここ数年は毎年のように何かしらの新作が公開されている。2021年以降の予定はまだ不明だが、モンスターバースが長く続いていくことを祈りたい。そして国産ゴジラも。
さて「ウルトラマン」シリーズだが、こちらも近年、活発な動きを見せている。「メビウス」以降は、アーケードゲームと連動したテレビシリーズ「ウルトラギャラクシー大怪獣バトル」や、新キャラクター・ウルトラマンゼロを主役にした映画「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」(2009年)「ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国」(2010年)、オリジナルDVD作品などを展開していたが、テレビシリーズの新作には至らなかった。
2011年からは、ウルトラマンゼロがナビゲーター役を務める「ウルトラマン列伝」がテレビ放送開始。歴代シリーズの名エピソードや、過去のウルトラマンを紹介する総集編などを放送するという内容で、放送期間は延長に延長を重ね、2年間も続いた。
2013年からは「新ウルトラマン列伝」としてリニューアル、同枠内で「メビウス」以来6年ぶりとなる新作「ウルトラマンギンガ」が全11話で放送された。2014年には続編となる「ウルトラマンギンガS」が放送。
2015年は「ウルトラマンX」が、さらに2016年には「ウルトラマンオーブ」、2017年には「ウルトラマンジード」が放送されている。いずれも2クールであり、過去の怪獣の流用が目立ちもするが、毎年新作が見られるのは嬉しい状況だ。2018年現在も最新作「ウルトラマンルーブ」が放送中である。いずれは一年間通しての放送、毎週新怪獣を登場させられるくらいまで勢いを取り戻してほしいところだ。
さて、2000年代中盤以降の怪獣特撮を取り巻く状況を、ざっと振り返ってきた。ここまで見てきたように、ゴジラやウルトラマンが「終わった」のも、すでに過去の話である。さらに海外でも、レジェンダリー・ピクチャーズの作品群が世界的な注目を集めている。またそれ以外にも、今年は巨大ゴリラが主役の「ランペイジ巨獣大乱闘」が公開されたり、スピルバーグ監督の「レディ・プレイヤー1」でメカゴジラとガンダムが戦うなど、怪獣の話題には事欠かない状況が続く。怪獣の時代が、再来している。今こそ見るべきなのだ、怪獣映画を。
で、最後に「ガメラ」だが……2015年に短いPVが公開された程度で、まったく新作の気配がない。あとはお前だけなんだぞ。早く目を覚ましてくれ。
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