「人類危機一髪!巨大怪鳥の爪」(1957)……ハリーハウゼンが撮るはずだった巨大怪鳥映画
原題「THE GIANT CLAW」
製作国:アメリカ
監督:フレッド・F・シアーズ
製作:サム・カッツマン
脚本:サミュエル・ニューマン、ポール・ガンジェリン
撮影:ベンジャミン・クライン
音楽:ミッシャ・バカライニコフ
出演:ジェフ・モロー、マーラ・コーディ、モリス・アンクラム他
空飛ぶ怪獣の映画といえば日本で生み出された「空の大怪獣ラドン」がまず思い浮かぶわけだが、同じ頃、アメリカでも巨大怪鳥を主役に据えた映画が作られていた。それがこの「人類危機一髪!巨大怪鳥の爪」である。このハッタリの利いた邦題はソフト化の際に付けられたもの。日本では未公開だったため、書籍などでは原題直訳の「巨大な爪」「ジャイアントクロウ」といったタイトルで紹介されていた。
監督は、「世紀の謎 空飛ぶ円盤地球を襲撃す」(1956)のフレッド・F・シアーズ。同作でタッグを組んだレイ・ハリーハウゼンを起用し、怪獣をストップモーションアニメによって描写する予定だったのだが、予算の都合で叶わず、ギニョールで代用されている。
さて、怪獣映画で最も大事なのは怪獣のデザインであろう。この怪獣、劇中の人物からしつこいくらいに「空飛ぶ巨大戦艦」と喩えられる。イメージしていただきたい。巨大戦艦に喩えられる飛行怪獣……いかにもゴツくて固くて強くてかっこいいイメージを抱かせるではないか。しかし残念ながらその実態は、ハゲワシと七面鳥を足して二で割ったような、非常に愉快な見た目(最大限のオブラート)なのである。
何が愉快かというと、その顔だ。怪獣の姿を捉えた連続写真によって、初めて顔が大写しにされるのだが、初めて見た人は思わず目を背けてしまうか、微笑みが溢れてしまうこと請け合いである。しかもなぜか思いっきりカメラ目線なのもまた愉快だ。なおポスター等では顔が巧妙に隠されている。制作側も、顔がアレだという自覚はあった……ということだろうか。
だが、怪獣を見た目で判断するなかれ。この怪獣、なんと宇宙怪獣なのである。明らかに地球の鳥が巨大化したようにしか見えないが、とにかく宇宙出身なのだ。どの星からどうやって地球に飛来してきたのかものすごく気になるが、劇中では一切説明されないし、誰も気にしない。しかもレーダーに映らないステルス能力を有し、また全身を反物質で防御しているためあらゆる兵器が一切通用しないという、ラドンやゴジラもびっくりの無敵っぷり。まさかのハイスペックである。
劇中での活躍は、地上の人間や列車を襲撃するシーンもあるが、やはり空中戦が見どころ。攻撃を仕掛けてくる戦闘機を次々返り討ちにし、コクピットから脱出したパイロットをもぐもぐ食べる。人間を直接捕食するという点ではラドンよりもこちらのほうが身近な恐怖を感じさせると言えなくもないだろう。
終盤ではついにニューヨークに飛来。都市に到来するまでに怪獣が倒されるパターンが多い中、ちゃんと都市破壊を描いてくれるのはポイントが高い。ただしよく見ると、特撮シーンには「空飛ぶ円盤~」からの流用がちょくちょくある。一番解りやすいのは塔が倒れるところだろうか(ちなみに本作で怪獣に襲われるのはニューヨークだが、「空飛ぶ円盤~」のほうはワシントンである)。ニューヨークでの最終決戦は、無敵の怪獣に対する華麗なる逆転劇、そしてあまりに雑すぎるラストシーンなど、最後まで目が離せない一本だ。
それにしても、シーンごとに怪獣の大きさが違いすぎませんか? 気のせいですか?
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