「小さき勇者たち〜ガメラ〜」(2006)……少年とともに成長する新・平成ガメラ
製作国:日本
監督:田崎竜太
製作:黒井和男
企画:佐藤直樹
プロデューサー:有重陽一、椋樹弘尚
脚本:龍居由佳里
撮影:鈴木一博
怪獣造型:原口智生
視覚効果:松本肇
美術:林田裕至
編集:平澤政吾
音響効果:柴崎憲治
音楽:上野洋子
音楽プロデューサー:和田亨
特撮演出:金子功
照明:上妻敏厚
録音:矢野正人
装飾:茂木豊
特技・撮影:村川聡
特技・照明:白石宏明
操演:関山和昭
アクションコーディネーター:阿部光男
制作プロダクション:角川ヘラルド映画
助監督:大野伸介
出演:富岡涼、夏帆、津田寛治他
1973年、ガメラと複数のギャオスが出現。苦戦を強いられたガメラは、最終的には自爆を選び、自らの命と引き換えにギャオスを殲滅した。それから33年後の2006年、小学生の少年・透は、赤い石と卵を発見する。卵からは小さな亀が孵った。透は亀をトトと名付け、こっそり飼うことに。しかしトトは普通の亀ではなく、異常に成長が早い上、飛行能力まで持っていた。やがてトトは透の前から姿を消す。落胆する透。だが、時を同じくして怪獣ジーダスが現れ、透の町を襲撃した。ジーダスに襲われそうになる透たちだったが、そこにさらなる成長を遂げたトトが駆けつける――。
1999年の「ガメラ3」以来、7年ぶりに制作されたガメラ映画。またガメラ生誕40周年記念作でもある。今までのシリーズとの繋がりは一切なく、シリアスな作風を突き詰めた平成三部作からは一転、昭和シリーズのようなガメラと子供の交流を主軸に据えたジュブナイル作品となっているのが最大の特徴。監督を努めたのはスーパー戦隊シリーズや平成仮面ライダーシリーズで活躍していた田崎竜太。脚本の龍居由佳里は特撮映画は今回が初で、ガメラの脚本に女性が起用されるのも初である。本作のノベライズも、龍居みずからが手掛けている。
本作のガメラは卵から孵り、身長30メートルの怪獣へと成長していく過程が描かれている。子供ガメラの撮影に使われたのは本物のケヅメリクガメで、成長後もその面影が色濃く残っているため、ガメラとしてのフォルムは踏襲しつつも、甲羅の形や体色などが歴代のガメラとはかなり異なるデザインとなった。
ガメラの対戦相手となるジーダスは、本作初登場の新怪獣。エリマキトカゲをモチーフにしたデザインで、見た目通りの凶暴な怪獣だ。奇抜で前衛的な歴代ガメラ怪獣と比べると一見地味だが、登場早々人間を貪り食うシーンは強烈。怪獣デザインを手掛けた原口智生によれば、体表のデティールはゴロザウルス、背中のトゲはバランを意識したらしく、大映よりは当方怪獣の遺伝子を受け継いでいるという。またその出自は作中で語られないが、33年前に出現したギャオスの死骸を食った爬虫類が突然変異して生まれた怪獣という設定。ガメラ世界はどこまでもギャオスに振り回されるらしい。
作中では志摩の港町に上陸し、町を破壊しながら人間を捕食。帰ってきたトトガメラと交戦する。この時のガメラは身長8メートル、対するジーダスは30メートルで、ジーダスはわざとガメラをいたぶっているようにも見える。戦いの場は志摩大橋へと移り、橋の上で身構えるガメラに対し、ジーダスはアーチによじ登って、上からの舌パンチで攻撃を加える。物語の舞台となる港町もそうだが、「上下への広がり」が意識された画作りもまた本作の特徴と言える。二戦目となる名古屋市街地でのバトルでも、高さ200メートル超えのツインタワーにガメラが頭から突っ込み、ジーダスがもう片方のタワーをよじ登っていく、というシーンが最大のクライマックスとなっている。怪獣のサイズダウンによって実現した、斬新な絵面である。
7年ぶりの新作となった本作は、平成三部作とはきっぱりと方針転換し、昭和シリーズへと回帰しつつ、さまざまな新要素に挑戦した意欲作であった。制作にあたっても多額の予算が投じられ、特撮シーンのクオリティも高い。しかし興行的な結果には結びつくことはなく、二作目が作られることもなかった。現時点では本作が最後のガメラ映画となっている。
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