「モスラ対ゴジラ」(1964)……空のモスラと陸のゴジラ、初の対決

製作国:日本

監督:本多猪四郎

製作:田中友幸

脚本:関沢新一

撮影:小泉一

美術:北猛夫

音楽:伊福部昭

特技・合成:向山宏

特技・撮影:有川貞昌、富岡素敬

特技・美術:渡辺明

特技監督:円谷英二

出演:宝田明、星由里子、小泉博他


 大型台風の影響で、インファント島からモスラの卵が海へ流出、日本へ漂着する。それをハッピー興行社が買い取り、見世物にすることを画策。小美人の「卵を返して」という声にも耳を貸さない。そんな時、干拓地の地中からゴジラが出現。モスラの卵を目指して進撃する。そこに親モスラが飛来し、戦いの火蓋が切って落とされた!


 「モスラ」の続編として、「ゴジラ」10周年の節目に公開された本作は、前作「キングコング対ゴジラ」に続き、人気怪獣の全面対決を描いている。ただし前作と決定的に異なるのは、着ぐるみ同士の戦いではなく、一方は操演の怪獣であり、陸と空との戦いであることだ。また本作は正義対悪の戦いでもあり、ゴジラを倒すために命をかけて戦う親子モスラの物語でもある。

 前作から守護神のイメージを踏襲しているモスラに対し、ゴジラは完全なヒールであり、破壊をもたらすものとして描かれる。「キンゴジ」とは打って変わって細めのフォルムであるが、モスラを睨めつける時のその悪人面は歴代でも随一のかっこよさ。皮膚のたるみにも生物感が表れている(後半はたるまない)。劇中ではモスラの暴風攻撃に圧倒されてしまうが、地面をのたうち回りながら放射能火炎を吐き散らす様も、悪の魅力にあふれている。ちなみに本作のゴジラは通称「モスゴジ」と呼ばれ、ファンからの人気も篤い。


 一方で善玉たるモスラも新規造形で、目つきが前回よりも柔らかくなっている。卵を守ろうとする母性的な情緒も見受けられる。また前回では軍の攻撃をものともしなかったモスラであるが、今回はゴジラに倒されてしまう。その後、卵から幼虫が孵り、ゴジラとの戦いを繰り広げる。幼虫から成虫になった前作に対し、今回は成虫から幼虫。モスラの登場は二度目だが、その表現は前回とがらりと変えてきているのが見て取れるだろう。そして圧倒的な生命力と破壊力を持つゴジラと、儚く散りながらも生命の再生を繰り返すモスラ。この対比構造も面白く、同じく怪獣対決作品であった「キングコング対ゴジラ」とも全く違った印象の作品となっている。


 また「キングコング対ゴジラ」はかなりコメディに寄った娯楽作で、戦闘シーンもレスリングの如しであったが、本作では円谷英二はリアルな戦いを目指して演出したという。本作から怪獣らしい戦いの演出が確立されてきた感があり、ゴジラシリーズの中でも本作がひとつのターニングポイントと言っても過言ではあるまい。なお、ゴジラとモスラはこれ以降何度も戦うことになるが、円谷英二が演出を手がけているのは本作限りである。

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