死ぬまでに見たい怪獣映画

「キングコング対ゴジラ」（1962）……日米怪獣、夢の頂上決戦

製作国：日本

監督：本多猪四郎

製作：田中友幸

脚本：関沢新一

撮影：小泉一

美術：北猛夫、阿部輝明

音楽：伊福部昭

特技・合成：向山宏

特技・撮影：有川貞昌、富岡素敬

特技・美術：渡辺明

特技監督： 円谷英二

出演：高島忠夫、浜美枝、佐原健二他

　パシフィック製薬の宣伝部長・多胡は、自社提供の番組を盛り上げるため、南太平洋に位置するファロ島の魔神伝説の取材を決行する。半信半疑のままファロ島に向かった探検隊だったが、雷鳴とともに覚醒した魔神――キングコングを目の当たりにする。大タコとの戦闘後、キングコングが眠りについたのを幸いと、取材班はコングを日本へ輸送することに。一方、北極海では流氷の中からゴジラが復活、帰巣本能に従って日本を目指し始める――。

　アメリカ怪獣代表のキングコングと日本怪獣代表のゴジラが戦ったらどっちが強いだろう――そんな空想を形にしたのがこの「キングコング対ゴジラ」である。RKOとのライセンス契約を結ぶことで実現したこの世紀の大決闘は、ゴジラ映画の第3作目でもあり、ゴジラ、キングコング双方が初めてカラー映画に登場した作品でもある。前年に公開された「モスラ」が、それまでのシリアスかつ怪奇色の強い作風とは一転、ファミリー層を意識した明るい娯楽作となっていたが、本作はその路線をさらに推し進め、お祭り映画らしいエンタメ大作として仕上がっている。

　この映画の元になったのが、「キングコング対フランケンシュタイン」なる企画である。発案者は「キング・コング」の特撮を手がけたウィリス・オブライエン。「海獣ビヒモス」の項でも述べたように、晩年のオブライエンは不遇だったが、それでも多くの企画を立て続けていた。そのうちのひとつが「対フランケンシュタイン」で、後に「キングコング対プロメテウス」と改題され、国内外に売り込みをかけられた。これを買い取ったのが東宝だったのである。しかし全てはオブライエンの知らないうちに進んだ話であった。腹を立てたオブライエンは東宝を訴えようとするも、裁判費用を出せずに断念。かくしてオブライエンの企画は彼の手の届かないところで「キングコング対ゴジラ」へと変貌を遂げたわけである。なお、本作はアメリカでも公開されたが、その前にオブライエンはこの世を去っている。

　オブライエンから円谷英二の手に渡ったキングコングは、他の東宝怪獣と同じく着ぐるみで表現されることになり、RKOからの要望によって顔のイメージも原典とはかなり変更されている（海外のファンからはだいぶ不評らしいが……）。ただ、見た目は変われど、美女に関心を示したり、ゴジラの口に木をねじ込んだりなど、オリジナルを髣髴とさせるような描写も盛り込まれ、確かに「キング・コング」の精神を継承していることを感じさせてくれる。

　対するゴジラも前作からデザインが変わり、逆三角形体型のコングに対して、下半身がどっしりした体型に、また着ぐるみにウレタン素材を用いることで軽量化を実現、より躍動感のある格闘を行えるようになった。どちらがどちらの引き立て役ということもなく、双方が主役と呼べる内容で、どちらにも見せ場がふんだんに用意されている。放射能火炎という飛び道具のあるゴジラに対して、肉弾戦一本のコングは不利に思えるが、後半には電撃能力を身につけるというパワーアップイベントがあり、戦力は互角に。二大怪獣の戦いは、富士山麓から熱海へともつれこんでいく。

　本作は初代「ゴジラ」を凌ぐ超大ヒット、観客動員数1255万人を記録した。この数字は今もなおゴジラシリーズ最高の数値である。その人気ゆえに再上映も積極的に行われたが、1970年に東宝チャンピオンまつりのプログラムの一つとして短縮版が上映された際、カットされたネガフィルムの紛失という事態が起こる。その後は短縮版しか見られない状況が続いたが、後に発見された後は短縮版と組み合わせて全長版に近い状態でソフト化されている。2016年にはネガフィルムが完全に揃い、全長版の完全再現と同時に４ｋデジタルリマスターが行われ、イベント上映やCSでの放送が実施、2021年「ゴジラVSコング」に合わせてソフト化された。