「怪獣島の決戦 ゴジラの息子」(1967)……ゴジラ、南の島でパパになる
監督:福田純
製作:田中友幸
脚本:関沢新一、斯波一絵
撮影:山田一夫
美術:北猛夫
編集:藤井良平
音楽:佐藤勝
特技・監修:円谷英二
特技・合成:向山宏
特技・撮影:富岡素敬
特技・美術:井上泰幸
特技監督:有川貞昌
出演:高島忠夫、久保明、前田美波里他
ゴジラ映画第8弾。今回の舞台は南海の孤島、ゾルゲル島で、前回に引き続き非文明世界での物語となる。ゾルゲル島では国連から派遣された実験隊によって気象コントロール実験、通称「シャーベット計画」が行われようとしていた。島に潜む大カマキリの影に怯えつつも、着々と準備が進められ、ついに実験開始。しかし正体不明の妨害電波によって、実験は失敗。気温を下げるはずが、逆に超高温が島を包み込んでしまう。その影響で大カマキリは怪獣カマキラスへと変異。カマキラスの集団は、島内で卵を発見、卵から一匹の怪獣が孵化。そのままカマキラスの餌食となるかと思われたその時、ゴジラが出現。孵化したのはゴジラの息子ミニラであり、妨害電波の正体は、ゴジラを呼ぶミニラの脳波だったのだ。ゴジラはミニラを守るべく、カマキラスと戦闘を繰り広げる。
本作の主役は何と言ってもミニラだ。ゴジラの子供が誕生する、という露骨にファミリー向けを意識した新要素のせいで「子供騙しに堕した作品」という印象を持たれることもあるが、内容はいたってシリアス。ミニラの描写もかなり生々しく、誕生時には全身ヌメヌメした液体に覆われ、ただ無力に地面を這い回るばかり。カマキラスに嬲られても、抵抗するすべも持たないのだ。赤ん坊といえば可愛いもの、という固定観念があるが、生まれたてはむしろグロテスクである。それは怪獣も動物も例外ではない。生物としてのリアルさを真面目に描きながら、同時に弱肉強食の非情さも映し出す。何種類もの怪獣が生息するこの島では、怪獣も食物連鎖を構成するピースの一つであり、食うか食われるか、殺るか殺られるかの世界なのだ。そんなゾルゲル島で、ゴジラはミニラを鍛え、ミニラは少しずつだが成長していく。これは親子の成長物語でもあり、生存のための過酷な戦いでもある。
ミニラのスーツアクターを務めたのは、当時「小人のマーチャン」の芸名で活躍していた俳優の深沢政雄。ミニラはゴジラの半分ほどの大きさしかないので、中に入るのもかなり小柄の人間でなくてはならなかったのだ。非常に動きづらい着ぐるみだったようだが、それが逆に幼児らしい自然なぎこちなさを生んでいる。深沢は続く二作でもミニラを演じている。対するゴジラはミニラとの対比のために従来よりも大きめに造形されており、スーツアクターも中島春雄からより大柄な大仲清治に変わっている。
ゴジラ親子の敵となるのは3体のカマキラスと大グモ怪獣クモンガ。これらの怪獣は全て操演によって演出されている。クモンガの造形物は約5メートルもの大きさで、その足8本と触覚2本を、総勢20人がかりで動かしていたという。本作から特技監督の座が円谷英二から有川貞昌にバトンタッチされているのだが、それまでの特撮と比べても何ら見劣りしない、操演怪獣の素晴らしい傑作である。
ドラマパートもいつもの東宝作品らしい手堅い作り。怪獣が跋扈する極限の状況下で、隊員の一人がノイローゼにかかり発狂する中、島ごと怪獣を凍結させるため、再び実験を行わんとする。今回は人間の力だけで生き延び、逃げ出さねばならないのだから、危険度は前作以上だ。そしてラストシーン、脱出に成功して喜ぶ隊員たちと、その一方で、島で眠りにつくゴジラ親子。シリーズ屈指の名場面である。
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