「キングコングの逆襲」(1967)……ジャングルの王者とロボット怪獣の激突

製作国:日本

監督:本多猪四郎

製作:田中友幸

脚本:馬淵薫

撮影:小泉一

美術:北猛夫

編集:藤井良平

音楽:伊福部昭

特技・合成:向山宏

特技・撮影:富岡素敬、真野田陽一

特技・美術:井上泰幸

特技監督:円谷英二

出演:ローズ・リーズン、宝田明、リンダ・ミラー他


 東宝設立35周年記念作品にして和製コング映画第二弾。「キングコング対ゴジラ」の際にRKOよりコングの使用権を5年間取得していた東宝は、コング映画をもう一本制作すべく企画を立てた。それは結果的に「ゴジラ・エビラ・モスラ南海の大決闘」へと姿を変えたわけだが、当時放送されていたアニメ版「キングコング」のスタッフの協力を得て新たに制作されたのがこの一本である。それゆえ、地名やキャラクターの名称にアニメ版との共通点が見られる。


 本作は「キングコング対ゴジラ」と話の繋がりはなく、コング自体も別個体である。身長も20メートルほどで、デザインも原典に寄せられている。南ジャワ海のモンド島と呼ばれる島に生息しており、原住民(一名)から「王」と呼ばれ恐れられている。コングのスーツアクターのは中島春雄で、「キングコング対ゴジラ」ではゴジラを演じていた中島が、ゴジラの敵だったコングを演じる形となった。


 島にはもう一体の怪獣がおり、それがゴロザウルスである。原作に登場したティラノサウルスのオマージュ的怪獣であり、アロサウルスの生き残りという設定で、怪獣というよりは恐竜と呼んだほうが正確であろう。体型も前傾姿勢で頭が大きく手が小さい、肉食恐竜のそれである。着ぐるみはもともと「ウルトラマン」の怪獣造形を担っていた高山良策に依頼されていたが、その出来に不満を感じた東宝の安丸信行によって仕上げられた。結果的に、生物感のあるリアルな質感の着ぐるみが出来上がった。安丸信行はこれ以降も二代目アンギラスやカメーバの造形を手がけている。コングとゴロザウルスの戦闘シーンも原典を多分に意識したもので、ストップモーションでの戦いが着ぐるみによって再現されている。ゴロザウルスの死を確認するシーンなど原典そのままだ。


 そしてコングと並ぶ、本作のもう一人の主役と呼ぶべき存在が、ロボット怪獣メカニコングである。その名の通りコング型のロボットで、これもアニメ版の設定位がベースとなった怪獣。特撮映画における「主役怪獣を模した敵ロボット怪獣」の嚆矢とも呼べる存在である。もともと土木作業用に作られ、エレメントXの採掘に利用されるが、磁力にやられて機能停止。その後、二号機が建造され、コングと戦いと繰り広げる。決戦の舞台は東京。戦闘は増上寺から東京タワーへと移り、タワーのてっぺんまでよじ登っていく二体。殴り合いではなくタワーからの蹴落とし合いになるのはコング対決ならではだろう。東京タワーのミニチュアも見どころの一つ。これは鉄骨を溶接して組み上げられた頑強なもので、実際に着ぐるみが上るための巨大なものから遠景用のものまで複数作られているが、どれもリアルな出来である。怪獣のサイズが20メートル級なだけにミニチュアも大きく、それが二体の決戦に臨場感を与えている。


 メカニコングを倒したあともコングの活躍は続く。冒頭、極地でのメカニコング登場から、モンド島でのコング対ゴロザウルスの死闘、東京タワーでの決戦、そして東京湾から逃げようとするドクター・フーの船に猛然と挑みかかり力を奮うコング――と、最初から最後まで怪獣たちがパワフルに暴れまわる姿を楽しめる快作である。メカニコングもゴロザウルスも個性的で、今でも人気の高い怪獣だ。ちなみに本作に合成スタッフで参加していた川北紘一はメカニコングがお気に入りだったらしく、平成ゴジラシリーズで再登場させようとしていたが、結局実現しなかった。


 なお、本作は円谷英二が特技監督を努めた最後の怪獣映画となっている。

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