「大巨獣ガッパ」(1967)……熱海の温泉街を襲撃する夫婦怪獣
監督:野口晴康
企画:児井英生
原案:渡辺明
脚本:山崎巌、中西隆三
撮影:上田宗男
美術:小池一美
編集:辻井正則
音楽:大森盛太郎
特技・効果:富川正蔵
特技・撮影:柿田勇、金田啓治、中村義幸
特技・操演:大隅銀蔵
特技・美術:山本陽一
特技監督:渡辺明
助監督:橋本裕
出演:川地民夫、山本陽子、桂小かん他
松竹の「宇宙大怪獣ギララ」に遅れること一ヶ月、日活もオリジナルの怪獣映画を世に送り出した。それがこの「大巨獣ガッパ」である。同社唯一の怪獣映画であり、「ギララ」と同じく映画輸出振興協会の融資を受けて制作された。また東宝特撮のスタッフだった渡辺明がこちらにも参加しており、原案と特技監督を務めている。
ガッパは南太平洋キャサリン諸島オベリスク島に生息する怪獣である。新しく建設されるテーマパークの見世物を集めるべく、日本からやってきた探検隊が島に上陸。突如発生した地震によって石像が崩れ、洞窟が現れる。探検隊がそこへ足を踏み入れると、地底湖の近くで卵が見つかった。卵はその場で孵化し、怪獣ガッパが生まれる。探検隊はガッパを日本へと連れて帰るが、一方島では親ガッパが子供の消失に気づく。怒った親ガッパは島を壊滅させると、日本へ向かって飛びたつのである。
話のパターンとしてはほとんど「怪獣ゴルゴ」であり、未開の地に眠る怪獣が文明社会を襲う、というモチーフも「キング・コング」以来すでに使い古されているが、ガッパというキャラクター自体は独特のもの。名前はカッパのもじりだが、カッパらしさはクチバシと緑の体色くらい。見た目はカッパというよりカラス天狗である。妖怪モチーフというのも珍しいが、父、母、子という家族構成も割とレア。親子怪獣ならゴジラやゴルゴ、モスラなどいくらでもいるが、この両親に子一人という構成は他に「ウルトラマンタロウ」のキングトータスくらいしか思い出せない。
そして子ガッパを追ってきた親ガッパは二体同時に日本に上陸、町を襲う。ただここで被害にあうのは熱海の温泉街という、派手なのか地味なのかよくわからないロケーション。温泉旅館の宴会場の天井を踏み抜いたり、狭苦しい飲み屋街を逃げ惑う人々の画は本作に独自の味わいを与える。ちなみに熱海のシーンでは母ガッパがずっと巨大なタコを咥えており、非常に間抜けなのだが、これは子ガッパに与えるためのものらしい。結局、戦車の攻撃を受けたときに落としてしまうのだが。
温泉街を破壊したあとは「キングコング対ゴジラ」よろしく熱海城を壊し、富士五湖のひとつ河口湖に潜伏する。似た境遇のゴルゴやモスラが盛大に街をぶっ壊しながら進撃する怪獣だったのに対し、ガッパはあくまで善の心を持った怪獣であるらしく、破壊シーンはあれど、壊すものは自分の邪魔になるものだけ。他の怪獣らしく破壊の限りを尽くして全てを火の海に変える、なんてことはしないのだ(それでも結構な被害が出ているが)。ゴジラやガメラはシリーズが軌道に乗り始めてから善玉路線に切り替わったが、ガッパは最初から心優しい怪獣なのである。そのせいかいまいち迫力に欠けるのは残念な点だが、親子愛によってのみ行動する純粋さはガッパの魅力でもあるだろう。親子の再会シーンも、実に人間臭くて、スパルタ式のゴジラ親子とは大違いである。
本作にも「ギララ」と同じく締まりのない主題歌がある。執拗に繰り返される「ガーッパァ~ァアアア♪」が耳に残る。さらに「ガメラ対ギャオス」にも「ガメラの歌」があったので、1967年は怪獣映画の主題歌が3曲も生まれたことになる。どうでもいいな。
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