「宇宙大怪獣ギララ」(1967)……地球~、ぼくたち~の星~♪

製作国:日本

監督:二本松嘉瑞

製作:島田昭彦

脚本:元持榮美、石田守良、二本松嘉瑞

撮影:平瀬静雄

特撮:川上景司

美術:重田重盛

音楽:いずみたく

特技監督:池田博

出演:和崎俊也、ペギー・ニール、原田糸子他


 高度経済成長真っ只中の60年代、テレビの普及によって映画産業は急速に斜陽化していた。一方、世間では「ウルトラQ」「ウルトラマン」をきっかけとして子供たちの間に怪獣ブームが巻き起こる。その影響は映画界にも波及し、東宝や大映の怪獣映画は映画不況の中でも安定したヒットを飛ばしていた。また同じ頃、政府は映画輸出振興協会を発足、海外受けの良い映画(怪獣モノやスパイアクション)に対し積極的な融資を開始していた。このような時勢にあって、各社が怪獣映画に活路を見出すのは必然的な流れであったと言えるだろう。


 そんな中、松竹が新たな怪獣映画を世に送り出した。それが「宇宙大怪獣ギララ」である。松竹にとって初の怪獣映画であり、初の特撮映画でもあった。その気合の入れようは並ではなく、映画輸出振興協会から融資を受けて1億5千万(当時)の制作費を投入。SF考証には「百億の昼と千億の夜」で知られる作家・光瀬龍、音楽には「ゲゲゲの鬼太郎」「見上げてごらん夜の星を」「手のひらを太陽に」等で有名ないずみたくを招き、そして特撮は「ゴジラ」など多くの東宝作品に携わった渡辺明や小田切幸雄らによって結成された日本特撮映画株式会社が手がけるという、ビッグネームを迎えての制作となった。


 ストーリーは、行方不明になった宇宙船を探し出すべく、富士宇宙センターからAABγ号が飛びたつ場面から始まる。宇宙空間で光るUFOと遭遇、逃げ出したAABγ号は、謎の発光物体が船体に付着していることに気づく。それを採取して地球へと持ち帰るクルーだったが、カプセルにしまっておいたはずの物体はいつのまにか消えており、未知の足跡だけが残されていた。そして山の中から宇宙怪獣ギララが出現。東京へと向かって進撃を開始するのであった。

 他の怪獣映画との差別化のためか融資を受けやすくするためか、宇宙やUFOといったSF的要素が全面的に押し出されており、物語のほぼ半分は宇宙空間や月面基地で進行する。なお宇宙空間でなんやかんやしている間は怪獣は一切登場せず、ギララが現れる頃には、上映開始から約45分が経過している。な、長い。


 さてようやくお目見えのギララであるが、体型はオーソドックスな直立二足歩行型。ただ頭部はひし形、アンテナのような触覚、複眼など、どことなくエイリアン感漂うデザインで、先行のキングギドラとは全く違ったアプローチの宇宙怪獣である。口からは火球を吐き、赤い火の玉になって空を飛ぶという能力も披露している。自衛隊の攻撃が一切通用せず、東京を火の海に変えたあとは、原発を襲撃してエネルギーを吸収する。どうやらエネルギーを糧として巨大化するらしいのだが、じつはこの特性がギララ攻略の鍵にもなっている……という設定。終盤ではギララとジープの追いかけっこというユニークなシーンもあり、都市破壊や防衛隊との交戦だけでは終わらない独自性を持っている。


 ギララは個性的な怪獣だが、映画自体は全体的にユルくてチープ。くだらないギャグや、あまりに質素すぎる宇宙船内のセット、いつのまにか決着している三角関係等々は、真面目に見るほど脱力してしまう。さらに脱力感を誘うのは主題歌「ギララのロック」で、映画冒頭で流れた時点ですでそのユルさにやられてしまうが、その後も劇中で所構わず流されるのだからたまらない。ビッグネームを迎えた意味はあったのか、と問いたくなるような出来なのだが、しかしそういったところも含めて一部特撮ファンからの偏愛を受けており、松竹唯一の怪獣映画は、日本怪獣映画史上屈指のカルト怪獣映画として今でも語り継がれている。


 ちなみに2008年には「ギララの逆襲/洞爺湖サミット危機一発」が公開された。監督は河崎実。なお、内容は本作と一切関係ない。

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