「空の大怪獣ラドン」(1956)……地下から空へと広がる円谷特撮の世界
製作国:日本
監督:本多猪四郎
製作:田中友幸
原作:黒沼健
脚本:村田武雄、木村武
撮影:芦田勇
音楽:伊福部昭
特技監督:円谷英二
出演:佐原健二、平田昭彦、田島義文他
「ゴジラの逆襲」に続いて東宝が送り出した怪獣映画がこの「空の大怪獣ラドン」である。本多猪四郎、円谷英二、伊福部昭と初代「ゴジラ」のスタッフが再集結。本作は記念すべき東宝特撮初のカラー作品であり、そして「ゴジラ」以上の予算と時間とを費やして撮られた大作である。
タイトルにもあるように主役となるのは新怪獣ラドンだが、最初に出てくるのはメガヌロンと呼ばれるヤゴの怪獣である。九州阿蘇の炭鉱に住み着いていたメガヌロンは、闇に閉ざされた炭鉱の中で鉱夫を次々と殺害。やがて地上に這い出してきたメガヌロンは人家を襲撃、人々はメガヌロン掃討作戦を展開する。同じ頃、阿蘇山の洞窟では巨大怪鳥ラドンが卵から孵り、メガヌロンを捕食していた。炭鉱を震え上がらせたメガヌロンは、ラドンのエサでしかなかったのだ。やがてラドンは阿蘇山から飛び立ち、世界中を超音速で飛び回る。暗く狭い地下の坑道、地上、そして大空へと、ストーリーはダイナミックな広がりを見せる。
ラドンは身長50メートル、翼長120メートル、体重1万5千トンという設定。ゴジラと同年代に生息していた古代生物の卵が、気候変動や火山活動など諸々の影響により異常な成長を遂げて生まれたものだ。マッハ1.5のスピードで空を飛び、飛行時のソニックブームや羽ばたきによる強風であらゆるものを破壊する。戦闘機と空中戦を繰り広げるシーンもあり、超音速で飛行するという設定に見劣りしないスピード感溢れる演出は、これが飛行怪獣第一弾とは思えないほどの出来栄えだ。ミニチュアワークもさらにダイナミックかつ精巧さを増しており、ラドンが破壊する西海橋のミニチュアは全長16メートルにも及ぶサイズで、それが真ん中からめきめきとひしゃげて海の藻屑と化してしまう。さらにクライマックスとなる市街地襲撃シーンも圧巻。ソニックブームによっていかに建造物が破壊されるのか。それが徹底的に計算された破壊描写は大胆であり緻密、リアリティを追求した迫真の映像に仕上がっている。「ゴジラ」から2年しか建っていないのに、着ぐるみとミニチュアによる特撮がここまでの進化を遂げているのはもはや驚くしかない。
そしてこの映画を語る上で外せないのがラストシーンだ。飛んでいたラドンが落下したのは、ラドンを吊っていたピアノ線が熱で切れてしまったから、というのは有名な話。本来ならNGシーンとなるはずが、円谷英二はそのままカメラを回し続けた。理由は「操演班のアドリブだと思ったから」らしいが、結果的に、なんともいえぬ余韻が漂う名シーンとなった。
当時の東宝特撮は海外からも注目を集めており、本作は映画の完成する前から、海外のバイヤーによって買い付けが行われていた。海外では「RODAN! THE FLYING MONSTER」というタイトルで公開。たちまち大ヒットを記録し、一部劇場では観客を整理するために警察官まで出動したというエピソードも残っている。
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