「怪獣王ゴジラ」(1956)……アメリカで再編集された海外版「ゴジラ」
原題「GODZILLA, KING OF THE MONSTERS!」
製作国:日本、アメリカ
監督:テリー・モース、本多猪四郎
製作:田中友幸、ジョセフ・E・リバイン
脚本:村田武雄、本多猪四郎
撮影:ガイ・ロー、玉井正夫
音楽:伊福部昭
出演:レイモンド・バー、宝田明、フランク岩永他
1954年に公開された「ゴジラ」が、記録的な大ヒットとなったのはすでに述べた通りである。その後、「ゴジラ」はアメリカに輸出され、1956年、「GODZILLA, KING OF THE MONSTERS!」のタイトルで公開された。しかし、その内容は日本版そのままではない。アメリカ向けに、ハリウッドによって独自の編集が施され、新規シーンの撮影まで行われたのである。
最も大きな変更点は、主人公がアメリカ人の新聞記者になっていることだ。冒頭、いきなり焼け野原になった東京の景色が映し出され、瓦礫の下から謎のアメリカ人が這い出してくる。彼こそが本作の主人公、レイモンド・バー演じるアメリカ人記者である。彼はカイロに行く途中、旧友の芹沢博士に会うために東京へ立ち寄ったという設定で、本作は彼の視点から初代「ゴジラ」の物語を辿っていく、という形に再構成されているのだ。
日本版と同じく山根博士や娘の恵美子も登場、新規カットの中には主人公と言葉を交わすシーンもある。しかしそういった場面では、オリジナル版の登場人物は後ろ姿しか映らず、別人で代用しているのが丸わかり。他にも明らかに日本人じゃない日本人のエキストラとか、怪しげな日本語だとか、我々からすればいろいろと突っ込みどころが多いが、海外の人にとっては特に違和感なく見られるのだろう(多分)。
特撮シーンの追加カットは主人公が瓦礫に埋もれる場面くらいで、ゴジラに関する新規映像はなく、それどころかところどころ削られている。
またゴジラが東京で暴れまわるシーンでは、主人公の実況解説が入り、多分よりいっそう盛り上げようとしているのだろうが、やはりこれはオリジナル版の雰囲気を壊していると言わざるを得ない。またラストシーンでも、山根博士の「あのゴジラが最後の一匹とは……」のセリフが削除され、主人公の「偉大な男を失い、そして世界は救われた」というナレーションで締めくくられる。
オリジナル版を知る者からすれば「残念」を通り越してもはや「珍品」という感じ。しかし当時の海外の人々にとっては、これこそが初めての「ゴジラ」であり、本作が世界にゴジラの名を知らしめたのは間違いなく、その功績は大きい。スティーヴン・スピルバーグも「ゴジラ」に衝撃を受けたというが、見たのは当然こっちの方だろう。なお、アメリカで日本版そのままの「ゴジラ」を見るには、80年代に入ってビデオソフトが販売されるようになるのを待たねばならなかった。
「GODZILLA, KING OF THE MONSTERS!」はアメリカを始め世界50カ国以上で公開され、1957年には日本に逆輸入、「怪獣王ゴジラ」のタイトルで公開された。日本版のフィルムは長らく行方不明になっていたのだが、最近発見され、講談社「ゴジラ全映画DVDコレクターズBOX」の14号に収録された。
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