「怪獣ゴルゴ」(1961)……海外では珍しい着ぐるみ式怪獣映画の傑作
原題「GORGO」
製作国:イギリス
監督:ユージン・ローリー
製作:ウィルフレッド・イーデス
脚本:ジョン・ローリング、ダニエル・ハイアット
撮影:F・A・ヤング
特撮:トム・ハワード
音楽:アンジェロ・フランチェスコ・ラヴァニーノ
出演:ビル・トラヴァース、ウィリアム・シルヴェスター、ヴィンセント・ウィンター他
海底火山の噴火に巻き込まれ、アイルランドのナラ島に流れ着いたジョーとサム。彼らはそこでオグラと呼ばれる怪獣に遭遇。見事に怪獣を捕獲し、ロンドンのサーカスに売り飛ばす。怪獣はゴルゴと名付けられ大人気に……しかし驚くべき事実が判明する。ゴルゴはまだ幼い子供でしかなかった。さらに巨大な親怪獣が、ゴルゴを取り戻すべくロンドンに上陸する!
本作はイギリス産の怪獣映画。製作元であるアメリカのキングブラザーズプロダクションは、もともと日本を舞台にした怪獣映画を作ろうとしていたが、計画は頓挫。次にパリを候補にするも、「海から遠いので、海から来た怪獣が上陸するには不自然」という理由で見直され、最終的にロンドンが舞台に選ばれたという経緯がある。
監督は「原子怪獣現わる」のユージン・ローリー、原案、脚本に同じく「原子怪獣~」のダニエル・ハイアット。海外ではストップモーションや操演が主流だった中、着ぐるみとミニチュアによる撮影方式を採用しているのが本作の特徴だ。「ゴジラ」に多大な影響を与えた「原子怪獣~」のスタッフによって、今度は「ゴジラ」式の怪獣映画が作られたのである。その日本へのオマージュゆえか、本作は米英を差し置いて日本で最初に公開された。
特殊効果を担当したのは、後に「2001年宇宙の旅」も手がけたトム・ハワード。ロンドンの名所であるタワーブリッジやビッグベンの大規模なミニチュアを豪快に破壊する様は怪獣映画の醍醐味を存分に味わわせてくれるし、真っ赤に染まる夜空の下を進撃していくゴルゴの威容はまさにイギリス版ゴジラと呼ぶにふさわしい。怪獣と人間との合成も見事で、特撮パートとドラマパートの繋がりも違和感なし。この年代の海外産怪獣映画の中でもひときわ完成度が高い。
またストーリーの面もよく出来ていて、怪獣登場後は人間がただの傍観者になりがちなところを、子ゴルゴと人間を絡ませることによって回避しており、怪獣と人間の距離感が近いのも見ていて楽しい。また海外の作品としては珍しく、人類は怪獣に対して一切無力であり、ただただ蹂躙され逃げ惑うしかない。ゴルゴには弱点も突破口もなく、親子ゴルゴは最後まで殺されることなく、壊滅したロンドンを尻目に海へと帰っていくのだ。「怪獣は人類など眼中になく、人類は万物の霊長という自覚を改めるべきだ」というメッセージは東宝の特撮作品にも共通する精神性である。また親子愛という普遍的なモチーフも、ゴルゴにただの巨大生物では終わらせないキャラクター性を持たせている。
なおゴルゴが最後まで生き残るのは、監督が娘に「原子怪獣~」を見せたところ、その結末に不満を漏らしたからだという。やはり怪獣でも死ぬのは悲しい。そんな思いがゴルゴを生かし、怪獣映画に「怪獣との共存」という新しい地平を切り開いたのである。
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