「原始獣レプティリカス 冷凍凶獣の惨殺」(1961)……へなへな怪獣VSガチなデンマーク軍
原題「REPTILICUS」
製作国:アメリカ、デンマーク
監督:シドニー・ピンク、ポール・バング
製作:シドニー・ピンク
製作総指揮:J・H・ザラベリー
脚本:シドニー・ピンク、イブ・メルキオー
撮影:アーゲ・ウィルトルップ
音楽:スヴェン・ギルドマルク
出演:カール・オットセン、アン・スミルナー、ミミ・ハインリッヒ他
珍しくデンマークが舞台の怪獣映画。制作はデンマークのサガスタジオと、アメリカのB級映画量産会社AIP。監督のシドニー・ピンクと脚本のイヴ・メルキオーは、「巨大アメーバの惑星」(1959)でそれぞれ監督脚本を務めたコンビだ(役割は逆)。「巨大アメーバの惑星」は火星を探検する映画なのだが、火星のシーンでは画面を真っ赤にするといった直球の演出や、よくパロディの題材となっている怪獣コウモリグモが登場するなど、その手の映画が好きなら見ておくべき一品。
さて、本題に戻りレプティリカスの紹介に移ろう。とある生物の肉片が、ボウリング作業中に発見される。それを培養液の中で再生させようと試みるが、肉片は予想以上の速度で再生を遂げ、ついには壁を破って脱走してしまう。これが怪獣レプティリカスである。レプティリカスには通常兵器による攻撃はほとんど通用しない上、傷つけることができたとしても、その肉片からまた再生してしまうため、爆殺などもってのほか。デンマーク軍はレプティリカスを安全に仕留めるための策を練ることになる。
で、この怪獣レプティリカスだが、死ぬほど安っぽいのである。一応首長竜みたいな見た目をしているのだが、動きといえば首をくねらせるくらい。手は首にぴったりくっついていて、指すら動かない。ときおり口から蛍光色の粘液を吐き出すが、その合成もあまりに雑で、顔の向きと粘液の飛ぶ角度が合ってない場面もちらほら。ちなみにこの粘液を浴びるとどうなるかは不明である。粘液が画面を覆い尽くした瞬間に次のカットに切り替わるためだ。なお、本作の予算は「巨大アメーバの惑星」の半分以下、10万ドル程度だという。それではこのB級感もやむなしだろうか。
本作はこのように怪獣映画としてはだいぶ情けない出来なのだが、情けないだけの怪獣映画なら掃いて捨てるほど存在する。この映画が凡百のB級怪獣映画と違うのは、ミリタリー描写の迫力にある。撮影にはなぜかデンマーク軍が全面協力しているらしく、怪獣との戦闘シーンには実物の高射砲や駆逐艦を使用しているのだ。また大量のエキストラを動員したパニック描写は、他の怪獣映画と比べても引けを取らない出来であり、特に跳ね橋のシーンは最大の見どころである。
怪獣以外の出来がいいだけに怪獣の残念さがより際立つ、という結果になってしまっているが、そのせいで数ある低予算怪獣映画界の中でも一際の異彩を放ち、カルト的人気に繋がっていたりもする。
またデンマークの宣伝も兼ねているのか、劇中では首都コペンハーゲンの観光案内にやたらと尺が取られている。これを見るとちょっとデンマークの知識がつくかも知れない。まあ、ついたところでどうなんだという話だが。
ちなみにこの映画、英語版とデンマーク語版の2パターンが存在する。日本でソフト化されているのは英語版のみだが、デンマーク語版ではレプティリカスが空を飛んでいるという。ぜひ見てみたいものだ。色んな意味で。
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