「ゴジラ FINAL WARS」(2004)……50年目のオールスター感謝祭

製作国:日本

監督:北村龍平

製作:富山省吾

プロデューサー:山中和成

アソシエイトプロデューサー:鈴木律子

脚本:三村渉、桐山勲

本編撮影:古谷巧

特撮撮影:大川藤雄

編集:掛須秀一

音楽:キース・エマーソン、森野宣彦、矢野大介

特殊技術:浅田英一

特殊美術:三池敏夫

照明:川辺隆之

造形:若狭新一

特殊効果:久米攻

操演:鳴海聡

特撮助監督:石井良和

アクションコーディネート:竹田道弘

ナレーション:山寺宏一

出演:ドン・フライ、松岡昌宏、菊川怜他


 20XX年、人類は怪獣の脅威に立ち向かうべく、地球防衛軍、そしてミュータントと呼ばれる新人類による戦闘部隊「M機関」を結成した。ある日、国連事務総長の専用機が消息を絶ったのを皮切りに、世界中で怪獣が同時多発的に出現する。地球防衛軍は怪獣を迎え撃つが、苦戦を強いられる。しかし、突如現れたX星人のUFOがすべての怪獣を消滅させてしまう。地球を救いに来たと語るX星人の統制官。X星人を歓迎する人類だったが、全てはX星人の罠であった――。


 ゴジラ生誕50周年記念作。観客動員数の減少を受け、東宝はゴジラシリーズの終了を決定、最後のゴジラ映画として制作された。内容としては「怪獣大戦争」+「怪獣総進撃」といった感じで、人類と宇宙人と怪獣たちの、地球の命運を賭けた壮大な最終戦争が展開される。登場怪獣はゴジラ、アンギラス、ラドン、キングシーサー、エビラ、カマキラス、クモンガ、ヘドラ、ミニラ、マンダ、モスラ、ガイガン、ハリウッド版ゴジラ(ジラ)、そして新怪獣のモンスターX。復活を望まれながらも叶わなかった昭和シリーズの名怪獣たちが、新たなデザインで集結している。キャスト面でも宝田明、水野久美、佐原健二、中尾彬、上田耕一、佐野史郎など新旧の東宝特撮作品でおなじみの面々が顔を揃え、また轟天号や妖星ゴラスまで登場、過去の作品に対する数多のオマージュやパロディなどなど、ゴジラ映画の枠を超えた、東宝特撮の集大成とも呼ぶべき豪華さで、平成怪獣映画最大級の大作となった。


 一度は消滅させられた怪獣たちは、地球人側がX星人の陰謀を見破ると、X星人たちによって再び世界各地に投下される。X星人と怪獣たちの猛攻によって地球防衛軍は壊滅に追い込まれるが、地球人側にはまだ切り札が残されていた。それが轟天号とゴジラであった。残された地球防衛軍のメンバーは、轟天号で南極へ。そして氷の下に眠るゴジラを蘇らせるのだ。ゴジラ最後の戦いの幕開けである。今回のゴジラは平成以降で最もスリムかつシャープな造形となっており、着ぐるみ自体も軽量化。また可動域が広く、特に腕を大きく動かせるようになっている。本来ならば怪獣の重量感を演出するため重みのあるアクションが求められるところだが、本作の怪獣バトルはスピーディかつダイナミック。着ぐるみとCG、そしてワイヤーアクションの併用によって、かつてなくアグレッシブな怪獣たちの戦いが実現した。

 ゴジラは轟天号を追ってきたガイガンを秒殺すると、そのまま海を渡って一路東京へ。ゴジラの進行を阻もうと差し向けられる怪獣をばったばったとなぎ倒しながら、X星人のUFOを目指していく。アンギラス、ラドン、キングシーサーとの戦いは、擬人化したようなアクションでコミカルに描かれ、かつての仲間どうしで傷つけあう痛ましさを抑えている。最後はゴジラのもとへ宇宙からモンスターXが飛来、強化改造されて復活したガイガンと、インファント島から駆けつけたモスラを交えての最終決戦となる。この4体だけでも1本の映画になりそうなものだが、終盤の一戦だけで消費してしまうのだから、実に贅沢な作りだ。ちなみにモスラの造形物は前作「東京SOS」からの流用。韮沢靖のデザインによる新生ガイガンは、メタリックブルーにシルバーを基調としたカラーリングと、よりスマートな造形が大変かっこよく、本作の怪獣の中でも特に人気が高い。新怪獣モンスターXは、ドクロをまとったような見た目の異形の怪獣。一応本作のサプライズ枠なので、何の前情報も入れずに見てほしい。


 そして激戦の後のラストシーン、50年に渡るゴジラ・サーガの締めくくりは、「ゴジラの死」ではなく、「戦いと憎悪の連鎖を次世代の子供たちが断ち切る」という、未来への希望と願いをこめたもの。初代ゴジラから描かれてきた、科学文明の増長に対する警鐘を踏まえつつ、さらにその先へと一歩踏み出した、最終作にふさわしいラストであった。


 本作の公開時、ゴジラは日本のキャラクターで初めて、ハリウッドのウォーク・オブ・フェームに殿堂入りを果たした。また本作の撮影を最後に、東宝大プールが老朽化のため取り壊されている。本作はゴジラ映画にとっても東宝特撮の歴史にとっても一つの区切りとなったのである。

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