「ULTRAMAN」(2004)……ウルトラマン第一話の現代版リメイク

製作国:日本

監督:小中和哉

監修:円谷一夫

チーフプロデューサー:鈴木清

脚本:長谷川圭一

撮影:大岡新一

美術:大澤哲三

編集:松木朗

音楽:小澤正澄、池田大介、鎌田真吾

音楽プロデューサー:玉川静

音楽監修:TAK MATSUMOTO(B'z)

特技監督:菊地雄一

VFXスーパーバイザー:大岡新一

フライングシーケンスディレクター:板野一郎

出演:別所哲也、遠山景織子、大澄賢也他


 とある研究機関から異形の怪物「ザ・ワン」が逃亡した。その3ヶ月後、航空自衛隊員の真木は、謎の飛翔体を調査するために緊急発進するが、赤い発光体と激突し、墜落してしまう。真木は奇跡的に生還するも、BCSTと呼ばれる対バイオテロ組織に拘束され、ザ・ワンをおびき寄せるための囮として利用される。やがてBCSTの思惑通り、ザ・ワンが真木のもとに現れるが、ザ・ワン抹殺のための作戦は失敗。その時、真木は銀色の巨人「ザ・ネクスト」へと変身する――。


 円谷プロによるウルトラマンシリーズの新作映画。本作は「ウルトラマン第一話が現代日本で起こったとしたら?」というコンセプトのもと、青い球体と赤い球体が地球に飛来するという「ウルトラ作戦第一号」の設定をベースにしつつ、防衛庁協力のもとでリアリティを重視した作劇を追求している。またウルトラマンや怪獣のデザインも従来のものとは一線を画し、生物的なリアルさというよりはグロテスクにも見えるような趣向で、まったく異質の存在として描かれた。こういった要素からダークかつシリアスな作品だと思われがちだが、その中身はヒーロー映画としても怪獣映画としても王道のど真ん中を行くストーリーで、「初代第一話のリメイク」という原点回帰と新しいウルトラマンの創造、その両方を成し遂げた快作である。また映像面においても、10メートルサイズのバトルシーンや、着ぐるみ、CG、合成、ミニチュアの巧みな使い分け、そしてクライマックスにおける「板野サーカス」などなど、当時の最新技術を駆使した表現の数々により、たいへん見ごたえのある作品に仕上がっている。


 本作の敵怪獣である怪獣ザ・ワンは、「青い球体」として地球に飛来。原典におけるベムラーの役割で、そのデザインもベムラーがモチーフとなっている。ザ・ワンは海上自衛隊員・有働の肉体と精神を乗っ取り、おぞましい怪物の姿へと変貌を遂げる。当初は人間と同じくらいのサイズだったが、「他の生物を取り込んで同化する」という能力によってすさまじいスピードで進化を遂げ、真木の前に現れた際には無数のトカゲを取り込んで体長10メートルにまで巨大化。変身した真木と最初の戦闘を繰り広げる。戦いの舞台はドーム状の廃墟であり、このサイズ感のバトルに加えて屋内戦というシチュエーションは実に新鮮。後半も地下通路で真木と対峙するシーンがあり(ここでの変身がかっこいい)、怪獣映画では珍しい屋内戦が目立つというマニア的には嬉しい作りである。最終決戦の舞台は新宿。飛行能力を得たザ・ネクストに対抗すべく、カラスを取り込んで翼を手に入れ、悪魔的な姿へと進化する(もはやベムラーの面影はナシ)。ザ・ワンとザ・ネクストの空中戦は、アニメ界で活躍する板野一郎のプロデュースにより、今までのウルトラマンでは見られなかった目まぐるしいスピードでのバトルが展開される。ウルトラマンの飛行シーンといえば両手両足を真っすぐ伸ばした体勢で直線的に飛んでいくだけだったが、本作では縦横無尽に飛び回りながらアクロバティックな戦いぶりを披露、CGの進歩によって実現されたウルトラシリーズの革新である。もう15年以上前の作品になるが、今見ても圧倒されるほどの出来栄えで、本作最大の見せ場である。このいわゆる「板野サーカス」と呼ばれる演出は、後のウルトラシリーズでも取り入れられている。


 本作は様々な新要素に挑戦した意欲作だったが、配給元の松竹が宣伝に乗り気でなかった上、上映館も少なく、興行収入としては残念な結果に終わってしまった。それを受け、続編「ULTRAMAN2 requiem」の企画も立ち消えとなった。また本作は、同時期に放送されていたTVシリーズ「ウルトラマンネクサス」と設定を共有している。先に本作を見ておけば、「ネクサス」をより楽しめるだろう。

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