「メカゴジラの逆襲」(1975)……昭和ゴジラ最後の戦い

製作国:日本

監督:本多猪四郎

製作:田中友幸

脚本:高山由紀子

撮影:富岡素敬

特殊効果:渡辺忠昭

美術:本多好文

編集:黒岩義民

音楽:伊福部昭

特技・合成:三瓶一信

特技・助監督:田淵吉男

特技・操演:松本光司

特技監督:中野昭慶

助監督:山下賢章

出演:平田昭彦、藍とも子、内田勝正他


 沖縄沖。かつての戦いで破壊されたメカゴジラの残骸を調査するため、潜水艇あかつき号が派遣された。しかしメカゴジラの残骸は一欠片も残されていなかった上、突如として出現した恐龍怪獣チタノザウルスに襲われ、あかつき号は海の藻屑と化してしまう。すべてはメカゴジラを生んだブラックホール第三惑星人と、社会への復讐に燃える科学者・真船信三の企みであった。彼らの秘密基地では、残骸から再建されたメカゴジラが完成しつつあった――。


 ゴジラ映画第15作で、東宝チャンピオンまつり内の一本。前作から引き続きメカゴジラが登場し、ゴジラ映画としては唯一、敵怪獣の名前のみが冠されたタイトルとなった。ポスターなどの宣材にも「最新作メカゴジラシリーズ第2弾」などと銘打たれており、ほとんどメカゴジラが主役扱いだと言っていい。当時のメカゴジラ人気がどれほどのものだったかが窺い知れる。


 監督は「ゲゾラ・ガニメ・カメーバ」以来5年ぶりの怪獣映画となる本多猪四郎、そして音楽には伊福部昭が復帰し、新曲を書き下ろしている他、初代のメインテーマが再び使用されている(ゴジラといえばこのテーマ曲、というイメージがあるが、昭和シリーズで使用されたのは、実は初代と本作だけだったりする)。怪獣から逃げ惑う群衆のシーンや、前作にはなかった自衛隊との戦闘及び大規模な都市破壊シーンも盛り込まれ、前作以上にシリアスかつ大人っぽい雰囲気とも相まって、東宝特撮の全盛期を彷彿とさせる一本に仕上がっている。一方、子供の助けを求める声に応じてゴジラが姿を現すなど、まるでガメラシリーズのようなシーンも挿入されている。かなり浮いているが。

 出演者には、前回から引き続き平田昭彦が登場。芹沢博士とは正反対のマッドな科学者を演じている。ヒロインを演じた藍とも子は「ウルトラマンレオ」の隊員役で出演していた(シルバーブルーメの餌食となるが……)。レオといえば、チタノザウルス役の二家本辰巳はレオのスーツアクターでもある。


 登場怪獣はゴジラ、メカゴジラ、チタノザウルス。ゴジラのスーツは一部改修され、目つきが鋭くなっており、昭和後期の中では特にカッコいい。メカゴジラはパッと見では前回と同じように見えるが、細かい部分にかなりアレンジが加えられている他、全体的に渋めのカラーリングに変更されている。劇中では、前作と異なりあまりアクションを見せず、姿勢も俯きがちで、一歩引いた場所から冷徹な視線をゴジラたちに投げかける。この演出の違いは意図的なもので、中野昭慶によれば、一度やられて蘇ってきた、恨みと復讐心を抱いた亡霊のようなイメージで、悪の権化として描いたのだという。前作とは違った意味での迫力を感じさせる。

 新怪獣チタノザウルスは、メカゴジラとは対象的にド派手な色をした怪獣。劇中では「恐龍」と呼ばれている。扇状の尻尾で強風を巻き起こすほか、肉弾戦も得意で、ゴジラに噛み付いたまま持ち上げたり、キックで吹っ飛ばすといった怪力も披露している。今回はゴジラの味方がいないため、「モスラ対ゴジラ」以来のハンディキャップマッチ。圧倒的に不利な状況で戦うのは、シリーズ通しても珍しい。


 人気怪獣メカゴジラを再登場させたものの、観客動員数は「ゴジラ対メガロ」を下回ってしまった。またこの時期はオイルショックや第二次怪獣ブームの沈静化などもあり、東宝は今度こそ怪獣映画の凍結を決定。海へと去っていったゴジラの背中が、二代目ゴジラの見納めとなったのである。また本作は本多猪四郎の最後の監督作品にもなった。

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