「キングコング」(1976)……40年の時を経て蘇る怪獣映画の原点
製作国:アメリカ
監督:ジョン・ギラーミン
製作:ディノ・デ・ラウレンティス
製作総指揮:フェデリコ・デ・ラウレンティス、クリスチャン・フェリー
脚本:ロレンツォ・センプル・Jr
撮影:リチャード・クライン
特撮:リック・ベイカー
特殊効果:カルロ・ランバルディ
音楽:ジョン・バリー
出演:ジェフ・ブリッジス、ジェシカ・ラング、チャールズ・グローディン他
1933年に公開された初代「キング・コング」の、初のリメイク作。監督は「タワーリング・インフェルノ」(1974)のジョン・ギラーミン。プロデューサーはイタリア生まれのディノ・デ・ラウレンティスで、2400万ドルもの巨費を投じて偉大なる古典作品のリメイクに臨んでいる。
設定やプロットは基本的に原典を踏襲している。しかし時代が1930年代から70年代へと移り変わっているため、ドラマ部分にはかなりアレンジが加えられている。原典では、島へと向かうのは映画撮影のためだったが、今回は石油会社ペトロックスの船であり、同社社員フレッド・ウィルソンが新たな油田を開拓するための航海となった。その船に潜り込んだ動物学者のジャック(彼が主人公)、そしてゴムボートで漂流しているところを拾われた女優志望のドワンを加え、霧に包まれた未知の島へと向かう。そこからコング出現までの流れは大体同じ。原住民の集落を発見し、ヒロインをさらわれ、儀式の生贄に捧げられる。そして、コングが満を持して現れる。
今回のコングは、モデルアニメーションではなく着ぐるみでの演出。東宝版コングが逆輸入されたような形だ。着ぐるみの制作を手がけたのは、特殊メイクアーティストのリック・ベイカー。ゴリラに対して並々ならぬ熱意を持っていた彼は、見事なスーツを作り上げたうえ、自ら中に入ってコングを演じている。全身の質感に加えて細かい表情の変化がリアルで、アップにも耐えうる素晴らしい出来映え。目の部分は作り物ではなく、アクターの目が露出する大魔神方式で、ナマの眼力もまた迫力を生んでいる。なお撮影中はコンタクトレンズをはめていたせいで視界は悪かったという。
コングの造形物は他にも実物大の両手が作られ、ヒロインとの絡みで多用される。当時最新の技術であったブルーバック合成が巧みに使われ、着ぐるみのコング、コングの手とヒロイン、そして背景との自然な合成に挑戦している。
また実物大(約12メートル)のコングロボットも作られた。もともとこのロボットだけで撮影を済ませる予定だったのだが、ろくに動けなかったため、画面に映るのはニューヨークでコングをお披露目する時のみ、時間にすれば1分にも満たないという有様である。ただ本作の宣伝には大いに利用され、日本でのプロモーションのために来日も果たしている。このロボットを作ったのがカルロ・ランバルディ。「未知との遭遇」(1977)「エイリアン」(1979)「E.T.」(1982)等々の名だたる作品群にも参加した特撮マンであり、彼は本作で初めてアカデミー賞を受賞した。一方で、真の功労者たるリック・ベイカーには何の賞も与えられていない。
本作は大ヒットを飛ばしたものの、あまり評価は高いとは言えない。最新技術を駆使した映像は素晴らしいのだが、やはりコング映画に求められるような要素を削ぎまくっているのが原因だろうか。島での見せ場はやはりコングと恐竜たちの対決だが、今回登場するのは巨大な蛇だけ。ティラノサウルスもプテラノドンも出てこないのだ。大蛇と原住民にのみデカい顔しているようでは、ジャングルの王者としての威厳もどこか嘘くさい。フレッドたちに捕獲される際も、原典のような大暴れは見せず、あっさり落とし穴にはまって捕まってしまう。今回のコングは、これぞコングと言えるようなパワフルさに欠けてしまっている。特撮技術は進歩しても、コングの新たな魅力を引き出すには至らなかった。
ちなみに日本ではロボットコングの来日PRもあってか超大ヒットをかまし、年間興行収入第一位に輝いている。このブームに便乗し、東宝は「キングコング対ゴジラ」の2度目の再上映を行った。
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