「ガメラ対宇宙怪獣バイラス」(1968)……イカ型宇宙人がガメラに挑む

製作国:日本

監督:湯浅憲明

製作:永田秀雅

企画:藤田昌一、仲野和正

脚本:高橋二三

撮影:喜多崎晃

美術:矢野友久

編集:関口章治

音響効果:小倉信義

音楽:広瀬健次郎

特技・合成:金子友三

特技・撮影:藤井和文

特技・操演:関谷治雄

出演:本郷功次郎、高塚徹、カール・クレイグ・ジュニア他


 地球へ向かう一隻の宇宙船。それは地球侵略を狙うバイラス星人の船であった。地球が目前に迫った時、船はガメラの襲撃を受け、あっけなく宇宙の藻屑と散ってしまう。バイラス人はすぐさま2号機を派遣。彼らはガメラこそ地球侵略の最大の障壁だと判断し、ガメラの排除を決断する。

 一方、地球上では茅ヶ崎でボーイスカウトのキャンプが開かれていた。スカウトの少年、正夫とジムは、小型潜水艇の体験中にガメラと遭遇。一緒に泳いだり、写真を撮ったりしていたが、バイラス星人の宇宙船が現れ、スーパーキャッチ光線でガメラと潜水艇を捕らえてしまう。少年たちはガメラの手助けでキャッチ光線から逃れるも、「ガメラは子供に愛着を示す」と分析したバイラス星人は、少年たちを拉致、人質にとってしまうのであった。無抵抗となったガメラに、バイラス星人はコントロール装置を着け、侵略兵器として利用する。バイラス星人は地球に対し降伏を迫るが、その頃宇宙船内では、少年二人が密かにバイラス星人への反抗を開始していた――。


 ガメラシリーズ第4作。あらすじを見れば解るが、今作から完全に子供向け路線に切り替わり、ガメラと子供の交流、そして子供のピンチをガメラが救うといった要素が強調されている。それに伴い、主役となる子供の人物造形も、前作までのような田舎生まれの純朴系から、都会的で、悪知恵の働く、垢抜けた感じの子供になっている点は特筆すべきだろう。子供受けを狙うにあたり、大人が理想とするような道徳的な子供ではなく、むしろ子供の憧れとなるような、少し背伸びしたイマドキの子供像が求められたのだ。正夫少年とともにアメリカ人のジムが活躍するのも、その印象を強めただろう。ちなみにアメリカ人の子役が起用されているのは、アメリカでのテレビ放送を前提としているため。本作以降の主人公も、日本人と白人の子役のコンビがお約束となった。


 本作の予算は前作と比べて1/3にまで減らされており、特撮シーンには過去作品の流用が目立つ。「対バルゴン」「対ギャオス」の戦闘シーンのダイジェストが約10分に渡って流されるうえ、バイラス星人に操られたガメラが暴れるところなどもかなりのデジャブ。敵怪獣である巨大バイラス星人と交戦するのも終盤のみだが、このバトルは素晴らしい出来である。バイラスの着ぐるみは4本の触手を操演で動かすもので、巧みに操られた触手でガメラと肉弾戦を展開。さらには水中に引きずり込んだり、空へ連れ去られたりとガメラならではのダイナミックなバトルが繰り広げられる。中でもインパクトが強いのが、バイラスが頭部を槍状に変え、ガメラを串刺しにするシーン。ガメラは腹に大穴を開けられ、突き刺されるたびに血を流しながらビクビクと痙攣する。このグロテスクな流血描写は、ゴジラとの差別化でもあろうが、ヤケクソさを感じさせなくもない。


 本編と特撮の両方を監督した湯浅憲明は、あまりに予算が減らされていたことから、これが最後のガメラだと思いながら撮影していたそうである。しかし蓋を開けてみれば大ヒット、翌年以降もシリーズが続くこととなった。「年2本のペースで撮ってくれ」という話も上層部から出ていたらしいが、湯浅はどうしても進行に無理が出るとして断ったという。

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