「恐竜グワンジ」(1969)……オブライエンの脚本をハリーハウゼンが映像化
原題「THE VALLEY OF GWANGI」
製作国:アメリカ
監督:ジェームズ・オコノリー
製作:チャールズ・H・シニア
製作補:レイ・ハリーハウゼン
原案:ウィリス・H・オブライエン
脚本:ウィリアム・E・バスト
撮影:アーウィン・ヒリアー
特撮:レイ・ハリーハウゼン
音楽:ジェローム・モロス
出演:ジェームズ・フランシスカス、ギラ・ゴラン、リチャード・カールソン他
「恐竜グワンジ」の前にまず「原始怪獣ドラゴドン」について触れておこう。「原始怪獣ドラゴドン」は、1956年に公開されたアメリカ・メキシコ合作の映画。メキシコにあるホロウ山を舞台に、恐竜とカウボーイの戦いを描いている。モデルアニメーションを使った作品としては初のカラー作品である。この作品はウィリス・オブライエンが1940年代に書いた「Gwangi」という企画が元になっている。色々な事情があって「Gwangi」は映画化には至らなかったのだが、これを買い取ったのが映画プロデューサーのナッソー兄弟。「Gwangi」は彼らの手によって制作されることになり、特撮もオブライエンが手がける予定になっていたのだが、いざ撮影が始まると、オブライエンはスタジオに入ることすら許されなかったという。さらにオブライエンの書いた脚本も別の脚本家によって大幅に書き直され、オブライエンは結局「原案」としてクレジットされるに留まった。彼の胸中の無念さは如何ほどだったろうか。
オブライエンの死後、オリジナルの「Gwangi」の脚本がレイ・ハリーハウゼンによって発見された。これを映画化したのが「恐竜グワンジ」である。プロデュースしたのはチャールズ・H・シニアとハリーハウゼン。「水爆と深海の怪物」「地球へ二千万マイル」等を世に送り出したコンビである。
物語の舞台となるのは20世紀初頭のメキシコ。売れないサーカス団のもとに「禁断の谷」で捕らえられた珍しい馬が持ち込まれる。それはエオヒップスという太古に生息した馬の祖先で、現代に存在するはずのない生き物だった。禁断の谷の呪いを恐れたジプシーたちは、サーカスからエオヒップスを盗み出して谷へと返そうとするが、その後をサーカス団の面々や古生物学者たちが追いかけていた。谷へ到着した一同は、生きて動く古代生物たちを目の当たりにする。そしてついに肉食恐竜グワンジが登場。主人公たちは投げ縄を武器に、グワンジの捕獲を試みる。
「原始怪獣ドラゴドン」と比べれば、恐竜とカウボーイという共通点以外はほとんど別物。「ドラゴドン」は終盤しか特撮シーンがなかったが、こちらは序盤からエオヒップスの見事なアニメーションを堪能できる。エオヒップスのくだりはオブライエンの脚本にはなく、ハリーハウゼンが加えたもの。体長20センチほどの子馬がなめらかに動きまわるうえ、合成も上手く馴染んでおり、技術の進歩を感じられる。また禁断の谷に着いてからもプテラノドンやスティラコサウルスといった恐竜たちが続々と登場。カウボーイとグワンジとの戦いもストップモーションであることを忘れそうになるほどのリアルさで、4頭の馬でグワンジの周りを取り囲みながら投げ縄を引っ掛けて捕縛するシークエンスなど「どうやって撮影しているのか?」と思わされるが、これは車から投げ縄を飛ばし、縄が重なる部分にグワンジの人形を合成しているのだという。捕獲されたグワンジが街へ連れられてきた後も、サーカスの象と格闘したり、逃げる群衆を追って大聖堂に突入するなど、見せ場は盛りだくさん。ハリーハウゼンの作品の中ではマイナーな部類だが、その特撮技術とサービス精神を存分に楽しめる作品である。
ハリーハウゼンは66年にも「恐竜100万年」という映画を撮っている。これは「紀元前百万年」(1940)のリメイクで、こちらも多数の恐竜がストップモーションで描かれている。これらの作品が後の「ジュラシック・パーク」(1993)に多大な影響を与えていることは言うまでもない。
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