「怪獣大決戦 ヤンガリー」(2000)……韓国怪獣再来!今度は怪獣バトルだ

原題「YONGGARY」

製作国:韓国、アメリカ

監督:シム・ヒョンレ

製作:シム・ヒョンレ

脚本:マーティ・プール

キャラクターデザイン:シム・ヒョンレ

撮影:キム・アンホン

出演:ダン・キャッシュマン、ハリソン・ヤング、ドナ・フィリップソン他


 韓国ではおなじみ(?)の怪獣ヤンガリー(ヨンガリ)が主役の作品。1968年公開の「大怪獣ヨンガリ」との繋がりはなく、全くの新作となっている。監督のシム・ヒョンレはもともとコメディアンだったが、幼少期からの怪獣映画好きが高じて自分で映画会社を立ち上げ、148億ウォンという予算を投じてこの映画の撮影に臨んだという。監督以外のスタッフも韓国人が中心だが、舞台となるのはアメリカで、キャストも全員アメリカ人なので、韓国感はまったく感じられない。よくあるアメリカ産B級映画の趣だ。


 物語は考古学者のキャンベル教授と古生物学者のヒューズ博士が巨大恐竜の化石を発見するシーンから幕を開ける。キャンベル教授は手柄を独占しようと目論み、怪獣復活を恐れたヒューズ博士は行方をくらませる。キャンベル教授の主導のもと化石の発掘作業が進められるが、作業員の不審死が相次ぐ。それでも発掘は強引に進められ、ついに全身の骨格が顕わになった――。一方、宇宙空間では地球侵略を企むエイリアンの宇宙船が地球に近づきつつあった。宇宙船が謎のビームを地球に照射すると、巨大恐竜の化石にたちまち肉が付き、怪獣ヤンガリーとして蘇った。ヤンガリーは宇宙人に操られるまま人類への攻撃を開始するのである。


 ヤンガリーのデザインはゴジラタイプの直立二足歩行型。人が入っていてもおかしくない見た目だが、着ぐるみではなく完全にCGで描かれている。しかしCGの出来が何とも悲しく、当時のテレビゲームでももうちょっとマシなんじゃないか、と思ってしまうほど。背景にもまったく馴染んでおらず、重量感も皆無。これなら着ぐるみでやったほうがまだなんぼかマシだったのではないか?


 ヤンガリーに対抗するのは世界最強のアメリカ軍。しかし攻撃は一切通用しないうえ、エイリアンによる粒子分解で瞬時に姿を消して別の場所に移動する。ヤンガリーは大都市のど真ん中に姿を現し、街中をパニックに叩き込む。対するアメリカ軍は相変わらずミサイルで応戦、所構わずミサイルを撃ちまくるので、周りのビルにもがんがん当たる。もはやヤンガリーによる破壊よりも流れ弾による被害のほうが甚大である(韓国映画は米軍をポンコツに描かなければならないという決まりでもあるのだろうか?)。ミサイルでは歯が立たないと分かると、ジェットパックを背負った特殊部隊を投下。生身の人間が高速で空を飛び回りながらマシンガンで怪獣と戦闘を繰り広げるシーンは、かつてない斬新さだ。「進撃の巨人」とかを先取りしていると言えなくもないだろう。


 やがてヒューズ博士らはヤンガリーの弱点を看破。ヤンガリーの額にエイリアンからの命令を受信する器官があり、それさえ壊せばヤンガリーは無力化されてしまうという。それを聞いたジェットパック部隊は、神風アタックで見事ヤンガリーの受信器官を破壊。たちまちヤンガリーはおとなしくなり、というか完全に人間の味方となり、倒れてくるビルから身を挺して人間を守ってくれる。180度の心変わりを見せたヤンガリーに対し、エイリアンはさらなる怪獣を差し向ける。それがサソリゲスだ。クライマックスはヤンガリーとサソリゲスの大決戦。頑張れヤンガリー。怪獣同士の対決は、日本ではおなじみだが海外作品では珍しい。ここだけでも見る価値はあるだろう。惜しむらくはサソリゲスが終盤にしか登場せず、戦闘シーンが一度しかないことだ。もっと早くにヤンガリーを改心させていれば、エイリアンがもっとたくさん怪獣を持ってきていれば……と思ってしまう。


 余談だが、本作は大槻ケンヂのバンド「特撮」が「ヤンガリー」という主題歌を提供している。

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