跋文:怪獣映画の現在とこれから(2021年夏)

 「序文:怪獣を取り巻く状況(2018年夏)」を書いてからちょうど三年ほど経過した。「ゴジラvsコング」の公開延期がなければもっと早くに完結していたはずだったのだが、こればかりは仕方がない。いや、むしろこの状況で今一度怪獣映画の現状を振り返れることになったのは、幸いだったのかもしれない。


 2021年現在の怪獣特撮を取り巻く状況は、まさに一種の怪獣ブームと呼んでも差し支えないほどの好況である。2014年のハリウッド版「GODZILLA」に始まったゴジラ映画復活の勢いは今もなお衰えることはなく、「ゴジラvsコング」は世界中で大ヒット。ハリウッド映画としては新型コロナウイルスパンデミック以降で最高の興行収入を叩き出し、新作の構想も噂されている。国内での実写版ゴジラの展開は「シン・ゴジラ」以降音沙汰がないものの、日本では初となる本格的なテレビアニメシリーズ「ゴジラS.P」が放送され、好評を呼んだ。最終回のラストシーンでは続編を匂わせるような要素もあり、続報に期待がかかる。


 円谷プロも上り調子が続いており、ウルトラマン55周年、ウルトラマンティガ25周年のアニバーサリーイヤーである今年は、映画「シン・ウルトラマン」の公開を控え、そしてティガの系譜を継ぐ新作「ウルトラマントリガー」の放送も始まっている。ニュージェネレーションと呼ばれる新世代ウルトラマンのシリーズは未だに途切れることなく続いており、10年連続放送も夢ではなくなってきた。他にも「ミラーマン」の新作漫画の連載、そして「TSUBURAYA IMAGINATION」という自社の月額動画配信サービスも開始、過去の円谷作品のほぼすべてが網羅されている。そして2018年秋に放送されたテレビアニメ「SSSS.GRIDMAN」も、近年の円谷プロを語るうえで外すことはできない。「電光超人グリッドマン」という、どちらかといえばマイナーなヒーロー特撮をリブートした本作は、特撮ファン以外にも幅広く評価され、2021年には新作となる「SSSS.DYNAZENON」が放送された。さらに「GRIDMAN UNIVERSE」なるメディアミックス企画の展開も発表。かつては「早すぎる名作」と称されたグリッドマンがここまで注目されることになるとは、やっと時代が追いついたということだろうか。円谷プロはさらにネットフリックスとタッグを組み、ウルトラマンの長編CGアニメを制作することを発表した。漫画「ULTRAMAN」のアニメ化に続き、今後も実写作品以外でもウルトラマンの活躍を楽しめそうだ。


 また東宝や円谷プロだけではなく、松竹・東映が怪獣映画の製作を発表。「大怪獣のあとしまつ」というタイトルで、怪獣の死体処理を描いた作品だという。公開は2022年と少し先だが、新たな怪獣映画の誕生が今から楽しみである。そして角川映画「妖怪大戦争ガーディアンズ」では、なんとあの大魔神が登場。電撃的な復活に古参の特撮ファンの間で話題となった。その他にもNHKドラマ「超速パラヒーロー ガンディーン」や、ネットフリックス独占配信のアニメ「パシフィックリム暗黒の大陸」など、怪獣関連の作品には枚挙にいとまがない。このような盛り上がりを迎えたのは、やはりモンスターバースの成功、そして「シン・ゴジラ」のヒットが最大の要因であろう。10年前、ゴジラもウルトラマンもほぼ終わりかけの状況だったことを考えると、現在の盛況ぶりはまさに奇跡的というしかない。特にゴジラというキャラクターを真に世界的な存在へと押し上げたモンスターバースの功績は計り知れない。これからも今の勢いが失われることなく怪獣映画の展開が世界規模で続いていくことを期待したいし、その果てにはきっと全く新たな怪獣映画の誕生や、ガメラの復活も待っていることだろう。

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死ぬまでに見たい怪獣映画 高橋めぐみ @megupoko

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