「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」(1966)……巨人同士の果てしなき死闘

製作国:日本

監督:本多猪四郎

製作:田中友幸、角田健一郎

脚本:本多猪四郎、馬淵薫

撮影:小泉一

美術:北猛夫

デザイン:成田享

編集:藤井良平

音楽:伊福部昭

特技・合成:向山宏

特技・撮影:有川貞昌、富岡素敬

特技・操演:中代文雄

特技・美術:井上泰幸

特技監督:円谷英二

出演:ラス・タンブリン、佐原健二、水野久美他


 東宝が放つ「フランケンシュタイン」映画第二弾。前作の設定を踏まえつつも、ストーリーは独立したもので、続編というよりは姉妹作と言うべきであろうか。また前回は巨人対怪獣の戦いが描かれたが、今回は巨人同士の戦闘である。イロモノっぽいかと思われるかも知れないが、さらに磨きのかかった恐怖演出や、リアルなミニチュア特撮、伊福部昭のL作戦マーチ、メーサー兵器の登場などからマニアの間では高い人気を得ている作品である。


 二体の巨人のうち、先に登場するのは海の怪獣・ガイラである。夜の海に出現したガイラは、船を襲撃。普通の怪獣映画なら一撃で船を沈めるところだが、ガイラの身長は25メートルほどしかないため、船によじ登り、船体を揺さぶって破壊しようとするのだ。これだけでも他の怪獣映画にない異質さを醸し出しているが、さらに恐ろしいのはその後。船から海に逃げ出した船員を追いかけ、必死に泳ぐ船員を一人ひとり捕まえて喰ってしまうのである。ガイラは明確に人肉を目的に行動しているうえ、25メートルというぎりぎり現実的なサイズ感、そして人形ゆえの敏捷さ、これら要素が三位一体となり、ガイラの恐怖を形作っている。


 ガイラ討伐のため、自衛隊は光線兵器と放電攻撃によるL作戦を展開。ここで登場するメーサー殺獣光線車は、これ以降のゴジラシリーズでもアレンジを加えられながら何度も登場し、おなじみの兵器となる。またメーサー光線に合わせて木々がなぎ倒されていくという名場面も、「地球攻撃命令ゴジラ対ガイガン」(1972)等に流用されている。


 L作戦はガイラをあと一歩のところまで追い詰めるが、そこに乱入してくるのが山の怪獣サンダである。サンダとガイラは同じ細胞を持つ、いわばクローンのような関係で、サンダがガイラをかばい、山中に匿うのも同族意識ゆえだろう。しかし人間に育てられていたサンダは、人を喰うガイラとは相いれず、ついには決裂。東京で決戦を繰り広げる。東宝特撮において都市部が決戦の舞台となるのは、実は55年の「ゴジラの逆襲」以来、11年ぶりだったりする。

 両者の戦いは壮絶そのもの。あくまでガイラを宥めようとするサンダに対し、ガイラはサンダを敵視して襲いかかっていく。同族でありながら解りあえぬ絶望感を互いにぶつけあう鬼気迫る肉弾戦は、精巧なミニチュアワークともあいまって、得も言われぬ迫力を生んでいる。徹頭徹尾、ホラーかつハードなテイストが貫かれた一本である。


 本作は1966年7月末に公開されたが、その頃テレビでは「ウルトラQ」(1966)が大ヒットし、「ウルトラマン」(1966)の放送が始まっていた。世は第一次怪獣ブームと呼ばれる現象の真っただ中にあった。当時の子供達の多くが「怪獣」という言葉につられてこの映画を見に行ったに違いないが、果たしてどんな感想を抱いたのか、気になるところである。ちなみに、本作で怪獣デザインを担当した成田亨は、「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」(1967)でもデザイナーを務め、多くの個性的かつ革新的な怪獣を生み出したことで知られている。


 冒頭にも書いたように、本作はマニアの間で異様に人気が高く、怪獣映画の最高傑作に本作を挙げる声も少なくない。クエンティン・タランティーノやブラッド・ピットも本作を愛好しているという。また、漫画「進撃の巨人」(2009~)にも多大な影響を与えている。

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