「ガメラ対深海怪獣ジグラ」(1971)……海の支配権を賭けた水族館横の決闘
製作国:日本
監督:湯浅憲明
製作:永田秀雅
企画:斉藤米二郎
脚本:高橋二三
撮影:上原明
美術:矢野友久
編集:宮崎善行
音響効果:小島明
音楽:菊池俊輔
特技・合成:金子友三
特技・助監督:阿部志馬
特技・操演:恵利川秀雄
特技・美術:石塚章隆
特殊技術:藤井和文
助監督:明瀬正美
出演:坂上也寸志、グロリア・ゾーナ、坪内ミキ子他
千葉県は鴨川シーワールドの近海で、謎の飛行物体が目撃される。それはジグラ星人の円盤であった。国際海洋研究所に勤務する石川とトム、そしてその子供らは、ジグラ星人の円盤に拉致され、地球侵略を宣言される。ジグラ星人はマグニチュード13の地震を起こして東京を壊滅させると、人類に降伏を迫る。隙を突いて逃げ出した子供たちはガメラに助けられるも、ジグラ星人の手先から追われる身に。一方ガメラはジグラ星人の円盤を破壊。ジグラ星人は母星との水圧の違いによって身長80メートルにまで巨大化してしまう。母星へ帰れなくなったジグラ星人は、オレンジ光線によってガメラの活動を停止させると、地球人への復讐を開始する。
ガメラ映画第7弾。前回の大阪万博に引き続き、今回は鴨川シーワールドとタイアップ。シャチやアシカのショーなどのPRに時間が割かれる他、シーワールドのミニチュアセットも作られた。ただ前作と同様、破壊されることはないのだが。
敵となるジグラはミツクリザメがモチーフ。亀vs鮫の水生生物対決である。見た目からして怪獣だが、知性を持った宇宙人。環境汚染によって住めなくなった母星を捨てて、地球の海に目をつけた。しかし美しい海を汚す地球人に怒りを覚え、自らが海の支配者になろうと目論む。
この頃は公害や環境汚染を背景とした怪獣が同時多発的に生み出されていた。同時期に公開された「ゴジラ対ヘドラ」のヘドラは公害怪獣の代表格であり、同年放送の「宇宙猿人ゴリ」の怪獣も公害がモチーフ。また「帰ってきたウルトラマン」第1話に登場したザザーンもヘドロから生まれたという設定だ。そんな公害怪獣たちの中でも、ジグラは明確に「人類への怒り」を抱いている点で、メッセージ性がより顕著である。ジグラは地球人の環境汚染を言葉によって糾弾し、海を守るためなら手段を選ばない。過激派環境団体の先駆けみたいな怪獣である。
ガメラとの戦闘では、基本的にジグラが優勢。海中での機動力はジグラが上で、ガメラを一方的に翻弄。鋭い頭部でガメラを何度も傷つける。知性とスピードを併せ持つジグラだが、ガメラを倒し、人質を手に入れた後は海中で爆睡。復活したガメラにも気づかず、人質にしていた潜水艇を取り戻されてしまうという、知性を疑いたくなるような失態を見せる。その後、再びガメラと戦闘を繰り広げるも、ガメラによって海中から空中へと連れ出され、高所から叩き落とされる。飛行能力のない敵に対する、お馴染みの攻撃である。戦いは地上戦へ移るが、今度は額に岩石を突き刺されてバランスを崩し、地面にバタリ。そこからはもはやガメラの一人舞台である。ジグラの背ビレでガメラマーチを演奏し、楽しげにダンスすると、ジグラを火炎放射で焼殺。黒く焼けただれていくジグラの最期。ここまで無様に倒される怪獣も珍しい。ちなみにジグラは昭和シリーズで唯一、火炎放射でとどめを刺された怪獣である。
当時の大映は深刻な経営難に陥っており、同じく危機的状況だった日活と配給網を統合、ダイニチ映配を設立する。本作もダイニチ映配による配給である。しかし両社の経営状態が改善されることはなく、同年末に大映は倒産。予定されていた次回作「ガメラ対双頭怪獣W」はお蔵入りとなり、大映ガメラシリーズも本作が最終作となってしまった。第二次怪獣ブームの盛り上がりを横目に見ながら、ガメラはしばしの眠りにつくことになったのである。
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