第5話 協力関係
アニメで例えたら中学生くらいの可愛らしいキャラが出しそうな声。
トゲトゲしい印象はなく落ち着かせてくれそうな
そんな甘い声が僕の名前を呼んでいる。
「ほんじょーさん?」
「……あぁすみません! えーっと、何の話しでしたっけ?」
「まだ
ほら出た。
今日も僕の防衛反応がビンビンだ。
なんかこう、無意識に敵対意識で
「DMのことですよね藤井さん?」
「…………はい」
藤井さんは聞き取れるけど限りなく小さい声で返事した。
「ほんとに、どうして僕にしたんですか? 藤井さんなら他に人脈があるので心強い人がいるように思えますが」
「…………」
「答えられないこともありますよね! 大丈夫ですまずは――」
「世間で言うところの『炎上』をした私をどう思いますか?」
――なんだ?
女の子の大丈夫や強がりは大丈夫じゃないって意味だと聞いたけど、男ならそのくらい察して喋ろ! ってこと?
そんなんできひん。
「うーんと、そうですねぇ~。でもこれは~その~」
「炎上の件。一部リスナーとデキてるんじゃないか? というのは
ファッ!?
それ、真っ黒じゃん!
そんな堂々と言い切れる内容じゃないけどな!?
「事実なんですね……」
「はい」
「そしたら藤井さん。僕の合い言葉でもある『ほんじょーの配信はあくまでもスタンダード!』っていうのは、名誉毀損などの法に触れることはしない、炎上案件を晒し加速させない、殺人など罪を犯した人に触れない、という意味なんです。つまり人道を踏み外した畜生には関わらないようにしています。今回だとファンとの交際は罪ではありませんが、一般的にはタブーとされるので協力は難しいです。僕の出来ることはいつものスタンスで藤井さんを外から擁護するだけとなります」
でも事実を認めてしまうのなら、話しは別だ。協力することで返って僕が叩かれる。
「……笑わないと約束出来ますか?」
「えっ?」
「笑わないで聞いて下さるのなら、本当のことを話します」
「笑いません」
そりゃ笑うって言えないよ。
なんかワケがありそうだな。
「リアルの私は男性が苦手で今までお付き合いをしたことがありません。自信のない自分を変えるために配信という形で異性と関わることを始めました」
大丈夫です。
僕も似たようなものです。
付き合ったことがないってことは、それって……。
「ほんじょーさん?」
「あ、はい聞いてます!」
「デビューしたての頃、アンノウンという方が枠に来ました。アンノウンは同接が伸びず同じような配信しか出来ない私にポジティブな言葉を投げ続けてくれました。次第に気を許すようになり、ついリアルの私を漏らしてしまいました。
「炎上に繋がったわけですね。それにしても……」
結構、やってることヤバいよね。
「でもそんなの、他のファンが見れば怪しいって思うはずですよ? ケイタさんは古参メンバーで会議したって言ってましたし」
「活動が上手くいって大きなイベントに呼ばれてたから、
いやーこれ、どうだろうな。
幸いにもケイタさんみたいな
「藤井さんとしてはどう対処するつもりなんですか?」
「全てを明かし……リスナーみんなに謝罪します」
「恐らくですが、相当数のファンを失うとことになるし適当に誤魔化さないと、居場所まで消えますよ? 僕ならリア友がおふざけでやってましたごめんなさい、の方が効果的かと……」
「いえ! ファンには正面から向き合います!」
……この子、ネットがどういう場所か知らないのか?
なんか浅い。それで通用すると思ってる部分が怖いまである。
謝ってから謹慎という名の休暇を過ごして、忘れられた頃にふらっと戻ってくれば……。
「わかりました藤井さんの思いが聞けたので、僕も対策を練ってきます。ちなみにいつまでに解決したいんですか?」
「理想は年内です……」
年内かー。今日が二十七日。間に合うか?
「了解です。明日の同じ時間に通話出来ますか?」
「はい」
「では今日はこの辺にしましょう。長々とありがとうございました」
別れの言葉を告げて通話を切る。
ふ~ちょっと緊張した。でも普通に会話できたな。そりゃモニター越しだもんな。
なんか弁護士みたい。でも明らかな負け戦。
僕だけじゃ
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