第87話 スペース……ギャングだと……

 偉いもんで社会不適合者の僕が毎朝メールを確認する癖がついた。


 生意気にもSNSにお仕事用依頼用のアドレスを載せているので、見逃しがないようチェックするようにしているのだ。


 そのメールフォルダに一通のメールが届いていた。


 えーと、スト鯖招待に関する内容だ。


 ほんとに選ばれていたみたい。


 まだ実感がないけど、夢じゃない。


 ふむふむ、明後日の二十日正午からスタートね。


 サーバのコードに出演者一覧まで記載されている。


 ……にしてもそうそうたるメンツだなぁ。


 間違いなく知名度低いのは僕。


 若干場違い感があるけど呼ばれた以上は盛り上がるよう立ち回らないと。


 そんな僕に与えられた役職は……「スペースギャング」


 不法なやり方でお金を集めて武器作ったりアイテムを違法取引することで自分達の勢力を拡大していく役職って書いてある。


 …………あの、運営さん。僕炎上擁護する配信してるんです。


 キャラとやってることが正反対すぎて上手く立ち回れるかわかりません……



☆★☆



「そうなんですよ僕、スペースギャングになっちゃって」


 夜の配信。


 今回のスト鯖参加者と役職が発表されたので配信で報告していたところだ。


『ほんじょーがギャングは草』

『絶対悪いことできないギャングやん』

『なんかほんじょーって悪ノリとかできなさそう』


 そりゃそうでしょ。


 僕は陰キャラですから。


 だから不安なの!


「苦手ですよこういうの……なんか指示されて『はい』しか言えない様子が浮かぶんですっ」


『草』

『ギャングのメンツがやべーからな』

『他誰いんの?』

『結構有名どころ揃ってる。ハイテンション配信のアールとか、際どい下ネタ言う江草ミネとか』

『とにかく喋るタイプが味方か』

『ついていけないほんじょー見ると、まるで自分を見ているようで辛くなるわ』


「でも、爪痕残したいです。これを機に他のイベント呼ばれたりしたいんで……」


『まぁまぁ応援したるわ』

『みずきちゃんポリスだって』

『ミニスカポリスのみずきちゃん見てえ!』

『捕まえて下さいいたぶって下さい!』

『ユイちゃんは探索者だって』

『ほう』

『そっか』

『お前らの性癖素直すぎるだろ』


「そうですねあの二人はその役職でしたね。というかしっかり招待されてますね」


『差がついちまったな。ほんじょーよ』

『これが実力よ』

『泣くな。強く生きろ』

『そなたは生きろ』


 この人たちは味方なのか敵なのか、わからなくなる時がある。


「そう言えば明日、その二人とゲームコラボする予定でした」


 いっけね。


 言うの忘れてた。


『4ねええええええええええええええええええええ』

『このゴミ人間があああああああああ』

『荒らせこの配信を!!!!』

『三秒やる。神に祈っておけ』

『血なまぐさい配信にしてやんよほんじょー』



 ぐふふ。


 ざまあみろ。


 これは強がりじゃないよ。


 そう、強がりじゃない。


 だけど、心に寂しさが……





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る