第86話 ゲーム概要

 いつもの配信。


「――ってなわけで、僕に席が回ってきたわけでした」


 昨日の出来事をまずはみんなに共有している。


『ほんじょーが昼に緊急発表があるって言うから来てみたが、マジで緊急だったわ』

『ついにほんじょーもそこまで登りつめたか……』


「いやいや、僕自身は呼ばれていないですからね」


『でもマイエンジェルがVだったとはな……』

『もっと求婚しとけばよかった』

『もう来ないだろうな……』

『心に穴が空いた……』

『また男だらけの男臭い配信に戻るのか……』


 ちょっと待って酷い言われよう。


 しょうがないじゃん。うん、しょうがない。


 そういう日もあるさ! 知らんけど。


『何のゲームやるん?』


「あっそうでしたね。ちょっとブームの去ったタイトルなんですが“コズミック・ワイルド”ってみなさん覚えてます?」


『あーコズワイね』

『なにその略し方キモ』

『出たよ何でも自分風に略したがるホモガキ』

『じゃあお前らなんて呼んでるんだよ?』

『コワイ』

『草』

『お前も大概やんけ』


「知らない人もいるかもなんで説明すると、資源の枯れた地球から移住した人類が“ワズルド”って惑星で文明築いて、そこで探索したり、武器作ったり、商売したりするかなり自由度が高いオープンワールドなんです。PvPも出来るし、未知なる巨大モンスターとのPvEもできて時代を作りかけたゲームです」


『よくその辺にいるプレイヤー56したわ』

『アジア鯖とかで中国人抹殺してた』


 僕としては、このゲーム好む人は野蛮人が多いと思ってる。


『ストーリーはないからたまにやるとすげー面白いんだよな』

『わかる。年に何回かはやる』

『で、そこで何すんのほんじょーは?』


 いけね。


 スト鯖の説明してなかった。


「ある程度情報出てますが各プレイヤーは役職に別れて行動します。探索者、武器商人、スペースギャング、宇宙ポリスって感じに」


『ほーん。ほんじょーはやり込んでるの?』


 ノー。


 だって開始直後にオープンVCのキッズに56されて死体撃ちまでされて怯えちゃったから。


「いえ。かなり素人に近いです」


『そっか。役職は?』


「僕は緊急参戦なので詳しくは聞かされていないです。というか、運営の発表があるまで言えないのでご了承を」


『でも良かったなスト鯖に呼んで貰えて』

『ここ数ヶ月の話題性ならほんじょーはかなり上の方じゃない?』

『たし蟹』

『人気配信者に混ざるほんじょーの姿が浮かぶわ』

『キョドってそう』

『むしろかなり飛ばすかもよ?』


 爪痕は残したい。


 これは本望。


 たくさんの配信者と絡みたい。


 でも、チキンハートの僕がどこまで耐えれるか……


『Amaterasuからも何人か出るし、それこそ藤井ユイとかも出るから楽しくやりなよ』

『でもさ、なんで譲ったの? 断る理由なくないか?』


「うーん、そこは何もわかりません。事情があるんでしょうけど、僕が口出す立場でもないので」


『そらそうよ』

『何にせよ席くれたんだから変に背負い込まず思い切ってやろうぜ』

『開幕直後に大手配信者56して大荒れしよっ』

『やるかよそんなこと』

『バカか。ダークホースはほんじょーだろ』

『可愛いVのとこ行ってペロペロしようや』


 うーん、この。


 やった直後僕は抹消される。


 社会的にも。


 でもペロペロしてみたい。


 いやキモいな我ながら。


「明日運営から僕の役職出るんでまたそのとき話しますね。ではさようなら~」





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