6章 ストリーマー鯖 開幕
第85話 夏と驚きの訪れ
85話
夏と驚きの訪れ
「ほんじょーの配信はあくまでもスタンダードであり、ちゃんとルールを守っていることを約束します! というわけで、みなさんこんばんは」
『こん』
『やあ』
『夜も暑くなってきたわ』
いつも通りの配信。
僕はデスクに座りのお決まりのセリフから配信を開く。
「いやー熱いですね~ぼくのとこは猛暑地域なんでかなりしんどいです」
『もう夏だもんな』
『夏って言うな悲しくなる』
『それはお前だけ』
『お前もだろ』
『一緒にすんな』
「確かに夏って言われるとちょっと寂しくなりますね」
『ほんじょーは予定あんの? イベントとか』
「バッチリないですよ」
『良かった。まだ俺たちと同類か』
なんだよ良かったって。
独り身で悪かったな。
『でも配信者はこれからイベント三昧だよな。キャンプに行ったり東京とかでイベントやるもんな』
『俺Amaterasuのイベント行く』
『あっ俺も』
『マジかよいつ?』
「へーAmaterasuはイベントやるんすね。暇だし顔出して来ようかな」
そう言えばみずきさんがイベントがなんたらって言っていたような。
『ほんじょーは独自開催でもしたら?』
「僕がですか? ムリですよビビって喋れなくなりますから。と言うより来る人いるんですか?」
『まぁ、行かないかな』
『行けたら行く』
行けたら行くは魔法の言葉。
つまり行かないってこと☆
『そう言えばイベント第一弾で二十日からスト鯖あるよね』
『あのゲームのやつね』
『面白いよねスト鯖。有名配信者がこぞって集まるからドラマもあるし、面白すぎて寝れなくなる』
……スト鯖か。
七月二十日から開催ってSNSで見たな。
正直出てみたいけど招待制だから僕みたいな弱小はムリ。
「あっそしたら視聴者参加型のカスタムやります? 今から」
『よっしゃボコボコにしたる』
『いいねやろうか』
『ほんじょーさん。私も参加していいですか?』
『もちろん』
『許可する』
なんであなたがたが決めるんだよ……
いや、参加していいんだけどさ。
「じゃあいつものFPSで。コードは……これっす」
コードを送ると瞬く間に上限の六十人が集まる。
意外と人来てくれたな。ちょっと嬉しい。
『ほんじょー倒したら藤井ユイちゃんとのデート券で』
『みずきちゃんも入れろ』
『ほんじょーアテンドして』
「そんな勝手なことしたら僕がボコボコにされます。じゃあチーム分けは……適当にこれにしました」
気の向くままにマウスを操作しチーム分けを終わらす。
『ほんじょーさんと同じチームでいいんですか私?』
『はぁほんじょーコラ!』
『あいつを殺せ! 生きて返すな!』
ヒィ!
適当に振っただけなのに!
「偶然ですって!」
『やはり女子が好きなのだな貴様』
「だって男ですもん」
『聞いたかみんな』
『おう!』
『殺す! こいつはどうにかしなきゃダメだ!』
「あー聞こえませんー! はい、始めまーす!」
☆★☆
「あの、なんかごめんなさいね」
『いいですよ楽しかったですから!』
『ほんじょーと同じチームになれて良かった。またやろうよ』
温かい人たちだ……
だってヘイトを買った僕のチームは初動被せられて毎回ボコボコにされていたのだ。
これもバトロワの宿命。
ルール違反じゃないから咎めることはできない。僕が弱いだけ。
なんだかんだでリスナーも楽しんでいる。なら結果良し。
「初めてのカスタムでしたけどちょっとドラマもあったし面白かったですね」
『いや気合い入ったわ』
『またやろうや』
『ほんじょーこういうの向いてんじゃね?』
「こういうのって?」
『主役タイプじゃないから周囲を輝かせることができるじゃんほんじょーって。だからリスナーにスポットが向くこともあるし、そのリスナーをほんじょーが倒したりドラマ作れるわけだし』
『確かにそれは言えてるわ』
『実況させても面白いし今度はそれやってみたら?』
いやーどうだろうな。
無意識だからできないときはできないよ僕は。
計算してできたら安定したコンテンツになるけど、沼る時は沼りそうだよ……
「反応は良かったんで検討しますね。じゃあさようなら~」
僕は締めの言葉を送ってから配信を閉じる。
今回は新しさを感じたな。
明日もやってみようかな……
天井を見上げたときスマホがバイブする。
誰だろう……ってさっき同じチームにいた女の子か!?
『ありがとうございました楽しかったです!』
って来てる。律儀な子だな。好きになっちゃうよ。
『こちらこそ。またやりましょう』
『ぜひ! それでちょっとご相談がありまして』
『なんでしょう?』
『ずっと隠しててごめんなさい。私、VTuber事務所V`s(ブイズ)所属のエルって申します』
!!!???!???!?!!?!?!?
『ほんじょーさんのファンでずっと配信見てました』
『驚きすぎて心の臓が飛び出ました。病院行ってきます』
『ちょっとダメージが大きいですねw 手遅れかもしれないです。ちなみに私のことはご存じですか?』
事務所は知ってるけど所属Vの名前までは……
『ごめんなさい』
『いいんですまだ弱小ですから。そこで折言ったお願いがありまして』
『結婚ですか?』
『www 違いますよ。さっきスト鯖のお話がありましたが、私の事務所から三名招待されていまして』
『二十日の件ですか?』
『はい。事務所が頑張ってくれて招待コード頂きました。ただ、その鯖に参加する人が大物や人気上昇中の人たちが勢揃いで私たちは参加に戸惑っています。なので、もしほんじょーさんがよかったら私たちの枠の一つを差し上げようと思って進めています。運営さんには承諾済みなのでぜひ参加して下さいませんか?』
キエエエエエエエエエエエエ!
真夏の夜、僕は思わず奇声を発した。
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