第115話 大泥棒、ここに極まる③
「ありがとうございやしたー」
NPC店員の無機質な声を背中で受ける。
僕が立ち寄ったのはスロット台が売られている怪しい中古商店。
ここには麻雀パイとかトランプとか妙に大きいライターなどが売られている。
どう考えても地球のアイテムばかりだから、移住してきた人がここで売ったりしてたのかな。
さてと、お目当てのスロット台が買えたしマイハウスに戻っちゃおう。
結構な出費だったけどすぐ元を取ってやる。
大負けして絶望に打ちひしがれる配信者の顔が目に浮かぶぜ……
☆★☆
「たっだいま~」
「ほんじょーもう帰ってきたんだ」
「おかえりでしょそこは」
「おかえり」
「いやいや並等さん。こういうときは、ご飯にする? お風呂にする? それとも……」
「鼻から指突っ込んで奥歯ガタガタさせる?」
なんで家に帰ってきたのにそんな乱暴なことされないといけないんだよ!
「旦那さん怖くて逃げちゃうよ」
「その程度で逃げる旦那などいらぬ」
ここ修羅の国?
「ぜひ幸せになってね。じゃあこれ置いておくから」
僕はインベントリを開いてスロット台を三台出現させた。
「にしても僕の希望通りの内装になったね。少し不安だったけど見直した」
「見直したってどういう意味? 私のことバカにしてるわけ??」
そりゃ不安だったさ。
この子のことだから変にお洒落に気を遣って、今時の女の子が好みそうなファンシーな内装になるんじゃないかとヒヤヒヤしてたさ。
ゲーミング部屋、ゲーミング部屋っぽく! って何度も釘を刺したから、薄暗くて所々ライトアップされてる雰囲気ある内装になったし。
「だって並等さんのことだからぬいぐるみとか推しの抱き枕とか置きそうじゃん」
「よしそこに立て。痛いのはほんの一瞬だから」
「ちょっトンカチ禁止! 包丁も置いて!」
殺気があふれ出てる!
落ち着いてよ!
「冗談だって! さすが並等さんだね! 美人!」
「最初からそう言えばいいのに~」
ヒエっ。
デレだした。
「その勢いでこのビラを配ってきてほしいな~」
そう言って僕は並等さんにビラを渡した。
「えーなになに……『新装開店! うちは出しまっせ! スロット専門店スタンダードはここが目印!』ね。なんか昭和の香りがするんだけど」
「適当に調べたらこんな宣伝があったから転用させてもらった」
「も――これ全部配るの? いっぱいあるじゃん……」
「僕も手伝うから大丈夫」
「手伝わなかったら刺してるよ」
それは言えてる。
「二手に別れよう。僕は街の東側。並等さんは西ね」
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