第29話 強引でもちょっと嬉しい約束
翌日。
朝からモニターの前で睨めっこする僕。
小さなため息を漏らしながらある文面を見続けていた。
『ご飯の件なんだけど来週の週末どうかな?』
これは姉さんが勝手に送ったもの。
迂闊だった。僕は寝るとき以外、パソコンを落とさないからその隙にやられてしまった。
はらわたが煮えくり返るほど憤怒の炎に巻かれたが、そもそもご飯に行くことは確定していたから手間が省けたとも言える。
いやでも、姉さんにしては普通の文章だ。
もっと派手で誇張した内容を送ることも考えられたのに、ほんとに普通。
これは存外。
対して返事は……
「はい日曜日はどうでしょう?」
と来ている。
問題なのはこの先は僕が考えないといけない。
困った事に女の子にプライベートなメッセージを送るのは人生において一度だけ。
体育祭でクラTが出来上がったのを教えるための超業務的なものを一通。
返事がなくて伝わってるか凄く不安だった。
でもあれから時間が経ち僕もやれるようになってるはず。
そうだな返信は……
「わかりました」
――送信っと。
良い感じだと思うぞ。僕にしては。
返事はすぐ来ないだろうから、夜まで適当に時間潰して待機しよう。
☆★☆
「姉さんは地元の友達と遊んでるので今はいません。姉とゲーム? いや無理っすよそれは。そもそもゲームとかしない人なのでグダグダになっちゃいます」
『なんだ残念』
『みずきちゃんと合わせれば凄いシナジーが生まれそうなんだけどな』
確かに。
それは見てみたいかも。
「ご飯の件ですか? まぁ元々約束してたので行きますよ」
『いいなぁオフで会えるなんて』
『活躍が実を結んだってことよ』
『いい加減スリーサイズ教えてくれよ』
『最近ってさ、配信者同士がユニット組んで活動することがあるじゃん? ほんじょーはAmaterasu入りを拒否したけど、別の形でチームを組むのはOKってことなの?』
「あー……そこは考えてもみませんでした。ユニット組むだけなら僕の活動に支障はないのでそれはアリかもですね。もっとも、そんなお誘いが来るわけないですけどね……」
でもユニット組むって面白いかもな。
よくゲーム実況者同士がプロチーム組むとか、歌い手がグループ結成とか見るし。
同じ目的を持った同士が集まることでのパワーを感じてみたい。
僕の場合は、炎上に関わる人と組むのかな?
それって大丈夫か? 炎上から守るマンになるのか、炎上を題材にするだけなのか。
そのユニット自体が物議を醸しそうだ。
炎上から守るにしても、僕しかこの活動をしてないからやはりぼっちだ。
ぼっち最高。異論は認めない。
『ご飯行くって言うけど、ご飯だけなの?』
「と、言いますと?」
『だってせっかく会うのにご飯だけで終わるのも忍びなくない?』
……そうなのか?
「でもご飯以外やることがないですし」
『カラオケとかさ、アミューズメント施設で遊ぶことだって出来る』
『バッティングセンターでホームラン打ってこい』
『夜のホームラン』
『夜の三冠王』
『何でも夜ってつければ面白くなると思うな』
まあ向こうが望むならそれでもいいかもしれんけど。
……あちゃーこのタイミングで返事が来たよ。
『日曜日ですねわかりました! 今度みずきちゃんを呼んで通話しませんか? 喋った方が早いですし』
まあそうなるよね。
あと十日あるしゆっくり進めていこうか。
『そういやこの前、ある配信者の初コラボで夢の国に行ってたしテーマパークでも行けば?』
「は?」
『は?(威圧)』
『は?(何言ってんだコイツ)』
『は?(こなみかん)』
「あっすいません。いつかはそんなこともしたいですね」
彼女でもいれば行きたかったよ。
いけない! 過去の悪夢が蘇る!
「まあこの辺にして、武器縛りカスタムマッチやりますよ!」
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