第79話 俺たちは「A」VTuber

 時刻は二時半を回った。


 残された時間は一時間半。


 このタイミングでカメラは裏の通路に戻った。


「よしよしよし……結構減りましたね荒らし連中が」


「さっきよりは……ね。まだ多い」


「でもみんなの活躍でスパチャも増えましたね! 気になって見に来た人が応援してくれてる気がします」


 いつの間にか通話に上がっていた藤井さんとみずきさん。


 他のAmaterasuメンバーも来てるようだ。


 でも通話に上がって貰ったのはこの二人だけ。


 なぜなら僕が会話処理できる女の子の数は二人だと知っているから。


「なんだろう。通路を進んで行く」


「なんかあるんじゃないすか?」


「社長室みたいなドアの前で止まりましたね。Amaterasuの会長さんの部屋もこんな感じのドアですよねみずきちゃん」


 短くうんと応えるみずきさん。


 確かに金色の装飾がされているゴー☆ジャスなドアだ。高そう。


 カメラマンが数回ノックすると拾えるかギリギリの声で「どうぞ」と聞こえる。


 ドアを潜ると、ソファが二つ。奥にデスクが並ぶ質素な光景が広がっていた。


 そのソファには男性と思しき人物が仰向けに寝転がっていた。


「あ~やっと来たか。ってことは佳境だね?」


 ……ん? この声は確か……


 聞き覚えのある声に首を傾げているとカメラは男性が座るソファの対面に座ると、


「えーみなさん初めまして。当ホストクラブオーナーの新宮領レオです」


「――やはりそうだ」


「会ったことあるのほんじょーさん?」


「僕にこの件を託してきた張本人、アダルトバーチャルエージェンシー代表の新宮領レオさんです」


「ほんじょーはこの人に依頼されたの?」


「はい。真那月レンさんの協力……というか彼女を更生させる目的で」


 そう言うと二人は意味深な言い方で「ふ~ん?」と応える。


 いやだって、依頼されたんだもん。不可抗力です。


「予想通り配信は炎上したね……でも見てるいるんでしょうほんじょーさん?」


 ……!


『はい』


「あはははやっぱりあなたは面白いっす。こんな隙間で生きる俺たちに協力するなんて。双方にメリットがあるわけじゃないのに」


 まぁそれは言えてる。


「へえこれ売上げが画面に映ってるんだ。あと四百万か~うちのホストには厳しいかな~」


 ん? 諦めるのか?


「でもね俺たちは屈しない。炎上しようがここで戦い続ける。隙間産業で生きる事に誇りを持ってるし、対等だと感じている。真那月! ジョー!」


 えっ二人ともいるのか!?


「「失礼します」」


「ここ、座って」


 入ってきたのは二人。


 どちらもキツネのお面をつけて顔を隠す。


 片方はいかにもキャバクラ嬢って見た目のドレス。


 もう片方は胸元がはだけたスーツ姿。


「ほんじょーさん。この二人と話しましたね。真那月レンと三ノ宮ジョーです」


 !??!?!?


「俺たちは負けません。アダルトバーチャルエージェンシ―はこれからも成長を続けます。もっとアダルティなコンテンツを配信していく。その第一歩が――」




「「「AVTuberだ」」」





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