第63話 一夜明けて
翌日。
あかぼんリスナーによる大炎上から始まった配信は鎮火の様子を見せることなく、耐えかねた真那月はたちまち配信を閉じてしまう。
それが余計面白かったのか今度はSNSに出現しえらい量の荒らしコメントが真那月に投げられたとか。
『真那月レン』『あかぼん』両者の名前がトレンドに上がるまで発展し、今も燃え続けている。
そのせいで朝からスマホを握り締めている僕。
ちなみに僕の方まで飛び火していて『目の前で炎上起きても何もできないカスw』とかDMで書かれている。
大変悔しい。
確かに真那月レンが燃えているなか、僕は見ているだけで打つ手がなかった。
今もなお続くあかぼんリスナーの暴動を止める術がない。
……またDM来たよ。
はぁ……見たくないけど、目を背けたら僕は屈したことになる。
それだけは許さない。
『ねえ。今どんな気持ち? 炎上止められなくて泣いてる? ビールが美味いわwwww』
やかましいわ。
なんで平日の朝からビール飲んでんだよ。
仕事しろよ。それか学校行け。どうせ暇な大学生とかでしょ?
待て。僕もニートみたいなもんだ。
そう言う面では人のことは言えない。
……あれ? じゃあ僕って…………
『すぐに沈静化させるのでそのままビール飲んでてください』
送信っと。
この手の連中はある程度相手してミュート。
それに尽きる。
『やーいほんじょーのチン子チン子~!!』
また来たよ。
絶対中学生。
BANされないように「コ」を「子」にしてるのが嘆かわしい。
ぜひその文章をお母さんにみせてほしいものだ。
『おとなしく寝てなさい』
はい送信っと。
いつまでこんなのとやり取りしないといけないんだろう。気が狂いそうになるわ。
今夜の配信どうしよう……ほぼ間違いなくあかぼんリスナーがやってくる。
限定配信? いや、逃げたとか書かれるな。
僕としては、真那月レンを助ける配信。あかぼんに凸る配信。の二本を考えている。
でも真那月を助けるにしてもなんで炎上したかわからない。
あかぼんの標的になった理由が必ずある。
じゃああかぼんに凸るのか?
いや負け戦すぎる。
こんな状態で向こうの土俵で戦っても勝てるわけがない。
真那月を擁護し彼女が報われるべき理由がなければ焼け石に水だ。
……待てよ。今回の件を受けて、アダルトバーチャルエージェンシーはどう対処するつもりなんだ?
ここは……思い切って聞いてみる、のもありか。
SNSアカウント開設してたりするのかな……
ん? なんだこの名前?
なんかDM来てる。なんか捨て垢くせえな。
『ほんじょー様 突然のメッセージ失礼致します。私、アダルトバーチャルエージェンシー代表を務めます新宮領レオと申します』
ファッ!?
☆★☆
「あっ……どうも」
誰もいない部屋でマイクに語りかける。
ヘッドセットからゴソゴソと音が聞こえたあと、男性の声が届いた。
「こんちゃーっす!」
少し高めの中性的な声。
女子学生が好きそうな声ってことはすぐわかった。
「はじめましてほんじょーです」
「おっと申し遅れました。アダルトバーチャルエ―ジェンシー代表の新宮領レオっす」
「真那月さんのとこの……」
「おっよくご存じで! さすがっすね」
「いきなり通話したいって言われてびっくりしました。どうして僕に?」
「それは互いにわかってることじゃないっすか! いや~炎上! してますね~」
それはそうなんだけど、いきなりボスの登場でいささか戸惑うよ。
「僕が炎上擁護してるからのご依頼だと思いますが、今回は骨が折れると思います」
「ネットに蔓延る匿名を盾に他者を攻撃する連中がいますもんね」
「チー牛の革命児あかぼんの実態がわからないのもあります」
「なるほどっす。オレからの依頼は二つっす。炎上の沈静化と……」
「ちょ、ちょっとストップ! 内容があっさりしすぎてついていけないですよ!」
「いいんですよ。それで」
「?」
「彼女は乗り越えなきゃいけない壁があるっす」
「壁……」
「いつか来るって思ってたっす。彼女はキャバ譲として活躍していましたが、ひょんなことで水商売から足を洗い真っ当に生きる道を選びました。Vへの転身はうまくいってましたが、いきなり結果出したから天狗になってましたし」
「えーと……」
「今はそれでいいんすよ。彼女もほんじょーさんと関わって気づくはずっす」
「解釈不一致な気が……」
「依頼は二つ。炎上の沈静化と覚悟を決めさせること。じゃあ依頼したっすからね」
そう告げて新宮領レオは退出した。
藤井さんともみずきさんとも違う不思議な依頼。
どいつもこいつも無茶なことばっかり言うけど……ほんじょーの配信はあくまでもスタンダード!
約束するからなこん畜生!!
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